戦国異聞〜鬼と竜〜
払暁の深い霧の中、男は単騎馬を進める。
眉目秀麗な顔立
羅紗の軍服に愛刀を二本差し、前だけを見つめる。
男は、自軍の最後の一人となっていた。
だが、それは、男の望んだ事であり、むしろ快感すら感じていた
男の目指す先は函館市街。そこは男が自ら選んだ死場所である。
『まて』
声がした。距離は前方五間程であろうか。
ほう。と、男は眉を寄せた。どうやらここらあたりが死場所の様だ。
『貴様、何処へ行く』
また声がした。
『解りきった事。本陣に切り込みに行くだけさ』
男は涼しげな声で応えた。世が世なら、役者になれそうな声だ。
『貴様、何者だ』
『俺か?俺の名は…』
銃声がこだました。男の身体を数発の弾丸が貫いた。
男は、前のめりに倒れ、動かなくなった。
隻眼の男がいた。男の前には、目に染みるような白い砂浜と、透ける様な青い海が広がっていた。
隻眼の男は草を一本口にくわえ、その海を眺めていた。だが、隻眼の男が本当に見ているものはもっと途方もないものだった。
『けっ』
隻眼の男は踵を返し、歩きだそうとした。
その片方しかない炎のような瞳に、砂浜に倒れている人影が映った。
『ほう』
隻眼の男は、倒れている人影に近付いていった。
『なんだ?こいつは』
倒れている人影は、羅紗の軍服に身を包み、腰には刀が二本差さっている。
『見慣れねえ格好だな。異国人か?』
隻眼の男は、倒れている人影を蹴飛ばしてみた。
『なんだ。死人かよ』
と、後ろを振り向いた瞬間、足首に、軽い衝撃を感じた。
『なんだ、生きてやがったのか』
これが二人の男の運命的な出会いだった。
眉目秀麗な顔立
羅紗の軍服に愛刀を二本差し、前だけを見つめる。
男は、自軍の最後の一人となっていた。
だが、それは、男の望んだ事であり、むしろ快感すら感じていた
男の目指す先は函館市街。そこは男が自ら選んだ死場所である。
『まて』
声がした。距離は前方五間程であろうか。
ほう。と、男は眉を寄せた。どうやらここらあたりが死場所の様だ。
『貴様、何処へ行く』
また声がした。
『解りきった事。本陣に切り込みに行くだけさ』
男は涼しげな声で応えた。世が世なら、役者になれそうな声だ。
『貴様、何者だ』
『俺か?俺の名は…』
銃声がこだました。男の身体を数発の弾丸が貫いた。
男は、前のめりに倒れ、動かなくなった。
隻眼の男がいた。男の前には、目に染みるような白い砂浜と、透ける様な青い海が広がっていた。
隻眼の男は草を一本口にくわえ、その海を眺めていた。だが、隻眼の男が本当に見ているものはもっと途方もないものだった。
『けっ』
隻眼の男は踵を返し、歩きだそうとした。
その片方しかない炎のような瞳に、砂浜に倒れている人影が映った。
『ほう』
隻眼の男は、倒れている人影に近付いていった。
『なんだ?こいつは』
倒れている人影は、羅紗の軍服に身を包み、腰には刀が二本差さっている。
『見慣れねえ格好だな。異国人か?』
隻眼の男は、倒れている人影を蹴飛ばしてみた。
『なんだ。死人かよ』
と、後ろを振り向いた瞬間、足首に、軽い衝撃を感じた。
『なんだ、生きてやがったのか』
これが二人の男の運命的な出会いだった。
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