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二人の絆 2

[299]  大堂寺 倭  2007-12-04投稿
 入部から三ヶ月、嬉しいような、嬉しくないような、複雑な気分で夏休みを迎えた。実家に帰ることが出来るのは正直嬉しいが、松風を置いて帰るのは不安でもあった。
 第一に、他の馬に比べて一回り近く大きい松風は馬房もそれなりに大きい上、汚れ方も半端ではない。他の部員に頼むとしても、毎日掃除されないという確信があった。
 しかし、俺の帰省予定日の三日後、松風も八月いっぱいまで他の乗馬クラブでトレーニングを受けることらしい。それならたいした不安もなく、しっかり面倒みてもらえるだろう。
 離れるのは少しばかり寂しいが、俺は免許を取るがあるし、松風は松風でトレーニングがある。

 帰省当日に、松風の鼻面に軽く口付けて俺は実家へと向かっていった。


 時々届く、松風の画像に顔をほころばせつつ、会える日を楽しみにしていた。


 しかし、部活に戻った俺が知ったのは、松風担当責任者が、女子部長にその席を横取りされたことだった。

 また、俺と女子部長はもとからどこか合わない間だった為、場の空気は途端に悪くなり、俺を初心者扱いしては、松風に乗せてはくれなくなってしまった。
 それでも、手入れできることが救いで、今までと変わらずコミュニケーションは取り続けていた。

 どんなに自分に言い聞かせても、やはり乗ることが出来ないのは苦痛でしかなかった。同期がどんどんと次へのステップを踏み上達していくのを、ただひたすら見ているのみ…。
 それ以上に辛いと思ったのは、松風を担当している先輩が女子部長と乗り代わった後に隣に来て前を向いたまま一言、

「…乗せてあげられなくて、ごめんなぁ……」

 今までで一番辛い言葉で、何も出来ない自分が嫌で、どうしようもなくて、感情だけがぐるぐるとねじれて、涙が出ないように我慢することが精一杯だった。

 尊敬することが出来ない人間にへこへこしなければ乗る事が出来ないくらいなら、俺は乗れなくてもいい。

 女子部長が引退するまでの辛抱だと、二人で耐えようと誓ったというのに…。


 世の中ってのはそんなに簡単にできちゃいなかった。

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