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ポストマン 参

[494]  COCORO  2007-12-06投稿
翌朝、郵便局から女性の家に来てくれと電話があったと伝えられ、青年は急いで向かった。
しかし、女性の出迎えは無かった。
いつも迎入れてもらっていたので、チャイムを押すのは初めてである。

玄関の戸が開くと、そこに現れたのは見知らぬ女性だった。

「母がお世話になったそうで…ありがとうございました。」

「娘…さん、でしたか。」

「はい…親切な郵便屋さんによくしてもらってると、それはもう嬉しそうに言ってました。」

「とんでもない…よくしてもらってるのは僕のほうです…。」

「実は…見ていただきたい物があって…此処ではなんですので、お上がりください。」

人の良さそうな青年に、少し悲しげな表情を浮かべた娘は、唐突に切り出した。
廊下を歩く青年の足は進まなかった。
娘の表情と、過去形の語尾に、すべてを悟ってしまったのだ。

「母は…亡くなりました。」

「…」

茶を差し出す娘から、青年の聞きたくない言葉がついて出た。

「心臓だそうです…わたしが見つけた時には……もう。」

青年は昨日の事を思い出し、後悔の念にかられた。

「きのう、元気の無さに気付いてたのに…無理にでも病院へお連れするべきでした…すみません!」

「え?…きのうって…母が亡くなったのは四日前ですが…。」

「そんな…いや確かにきのうハガキを手渡して……。」

「ハガキ…。」

娘はハッとして、眼を潤ませた。

「母は、きっと最期にお別れをしたかったのでしょう…あなたのことをそこまで想って…お母さん…ううっ。」

こらえ切れず、鳴咽と共に娘の目から涙が零れ落ちる。
青年は、それほど自分のことを想ってくれてたのかと胸が詰まった。
しかし娘の言う想いと、
恋愛経験の少ない、青年の思う想いは違っていた。
そう、女性は青年を、一人の男として見ていたのである。
そしてこの後の展開が無ければ、女性が青年の前に現れる事は二度と無かったで有ろう。

娘は、真新しい封筒を青年の前に差し出した。

「…これは?」

「母が…あなた宛てに書いた手紙です。」

「拝見していいですか。」

「読んでやってください…。」

「拝見します。」

その手紙には、青年への秘めた、熱い想いが綴れていた。

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