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ポストマン 四

[500]  COCORO  2007-12-07投稿
手紙を読み終わった青年に困惑は無かった。
むしろ、女性の気持ちを想うとまた胸が詰まった。
「もう一つ、見ていただきたい物があるんです。」

そう言うと娘は、輪ゴムでとめた分厚いハガキの束を二つ差し出した。

「母の書斎にありました。手紙と一緒に…母は、そのハガキの入った机の引き出しに手を掛けたまま…。」

青年は不思議に思った。
片方の束のハガキには、宛ては有るが消印が無い、裏を見ると白紙だった。
「あなたに逢いたい一心で…母は自分自身にハガキを………。」

「これ全部…ください…。」

手紙とハガキを抱え込み、青年は泣き崩れた。

次の朝、青年がいつもの様に仕分けされた郵便物を確認していると、あのハガキが混ざっていた。
消印も正規のものだったので、理解できなかったが届けるしかない。
家が近づくと、背の低い垣根の向こうに人影があった。
しかし、それは娘ではなく女性だった。
青年は切なかった。
ハガキを手渡すと、いっそう青白く力無い微笑みを浮かべて、何も言わずに消えていった。

仕事を終えてアパートに帰った青年は、すぐにハガキを調べると、消印の無いハガキが一枚減っていた。

二日後、ハガキがまた混ざっていた。
この日の女性は、腰まである垣根から身を乗り出し、待ちきれない様子だった。
その顔色はどす黒く変色し、凹んだ眼をぎらつかせて、微笑むというよりニタついてみえた。
さすがに優しい青年も、背筋に寒いものが走り、恐怖を感じた。

次の日から青年は、体調不良を理由にして仕事を休み、アパートに引きこもった。
恐怖心も有ったけれど、行かなければ女性も諦めてくれるのではないかと思ったからだ。
事実それ以来、消印の無いハガキが消える事は無かった。

それから数日が経ち、そろそろ仕事に復帰しようと考えていた矢先のことである。
青年は暇を持て余し、朝のワイドショーを観ていると、謎の死を遂げた夫婦という見出しでテロップが出た。
三つ先の町での事件で、夫婦の名前と顔写真が出た瞬間、青年の顔から血の気が引いた。
それは女性の娘だった。
中継に切り変わり娘の家が映ると、家からスーと出てきて消えていく、女性の姿がうっすらと映っていた。

「そんな…何故だ。」

青年は慌てテレビのスイッチを切った。

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