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Raven Curse 《序章―4》

[167]  シラ  2007-12-08投稿
「えー、次にこの2式を連立させて―」

チョークが黒板を叩く乾いた音と先生の凛とした声音が周囲に響き渡り、独特の調和を奏でている。
だが、それを傾聴する生徒は少ない。教室の大半は、専ら私語の領域で占められていた。
その内容は一律で、彼らの口調や仕種が、不穏な空気を醸し出している。

「ねー、知ってる?先日転校して来た子――ほらあのディアって子、例の殺人事件の―」

「うん私も聞いた。“あの女”の息子なんでしょ?やだー、ちょっと気味悪いんだけど」

「何でウチの学校に転校して来んだよ。正直迷惑なんだけど、そういうの」

「だよなー。殺人鬼の血が流れてるような奴なんかと同じクラスかと思うと。気味悪くて勉強も手に付かねーよ」

話題の中心は、僕だ。
最も、最近転校して来たばかりの生徒の噂話など、別段珍しいことでもないだろう。それはある種の習慣的なもので、どこにでもある現象だ。
だがそれは概ね賑やかな話題であるのが一般的なわけで。僕の場合、状況が違っていた。

この地に引っ越して来て、1か月が経とうとしている。
あの事件以後、様々な非難や誹謗中傷を受け、そこから逃げるようにしてこの地へとやって来たのだ。
そしてつい2週間前、新たな学校の門を潜ったばかりだった。
しかし、あの事件は余りにも有名になり過ぎていた。
だから僕が“あいつ”の息子だと悟られるのも時間の問題だった。
それが早くも現実となり、今に至っている。
ただ、それだけの話だ。
最もそうなるのを予期し、他の生徒と積極的に馴れ合うのを避けたのも、早まった原因の1つかも知れない。その点で僕にも過失があると言えなくもない。
もう、どうでもいいことだが。

僕は虚ろな眼差しを窓外の景色に向けた。唯一喜ぶべきことは、窓際の席に座れたことだろう。目の遣り場に困らないから。

『ドン!』

突然、激しい打撃音が周囲を黙殺した。
全員の目線がこちらの方向に収束する。
間近で聞いた僕の衝撃はそれ以上で、唖然として隣席を見る。

浅黄色の髪の女子が、机上に掌を押さえ、憤然と立ち尽くしていた。


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