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航宙機動部隊前史・25

[473]  まっかつ  2007-12-10投稿
だが、この時点でも、惑星何住化→恒久的入植の流れがスムーズになっていた分けでは無かった。
苦肉の策として宙際連合は、様々な優遇措置を釣餌に、現状の人工植民体や船団勢力を《有人惑星定住予定自治団体》として登録・もしくは誓約させる様にしたが、焼石に水だった。
航宙遊牧民族は強大で豊かであり、文化も科学技術も惑星定住勢力に比べて一星紀以上も進んでいる事実が、この程度で覆れる筈が無かった。

余りにも微小な《中華》・哀れな程貧弱な《人類文明の総本山》―このままでは遅かれ早かれ航宙遊牧民族に敗れ・呑み込まれ・吸収同化されるのがオチだと彼等に名指しされた《蛮夷》のみならず、味方の大多数ですらそう考えていたのだ。
そう。
論理的・科学的・合理的に予測すれば、それ以外にありえない筈なのだ―\r

宙際連合側が何故こんな危機感を抱いたのか?
それには地球時代末から連綿として続いて来た言わば人類文明保守派の思潮が底流にある。
テクノ=クライシスとそれによってもたらされた文明崩壊の危機を歴史的な記憶として共有するこの思想を支持する者は多く、彼等は宇宙時代のネオコンを以て自ら任じていた。
その中でも宗教界が常にリーダーシップを保っており、太陽系資本がその運動の財政的基盤であり、更にそれを現世面で体現したのが太陽系連邦だった分けだ。
このシヴィ=コン=トライアングル《人類文明保守の三位一体々制》は再び結び付きを強めた。
端的に言えば、文明保守派を信奉する人々は、宇宙文明からすれば《負け組》に所属していた。
一向に生活が向上しない可住惑星開拓民・いつも航宙遊牧民族や武装勢力の襲撃や収奪に脅え続ける辺境星系の市民・繁栄の配分に与かれぬ幾多の群小諸国―\r
航宙遊牧民族は軍事力でも技術力でもずば抜けているだけに、あらゆる分野で独占体制を築き、結果として他者が競合に参入出来なくなったのは事実だった。
少なく共、従属や同化を拒む存在に対してまで恩恵を及ぼす程には彼等は気前良くは無かった。

悪いのは航宙遊牧民族だ―\r
奴等が自分一人だけ良い暮らしを満喫し、限られた仲間にしか進んだ文明を提供しないから俺達はこんなに苦しい暮らしを強いられているんだ!
先進勢力や航宙遊牧民族と比べて教育・情報面で制限された彼等の中で、何時しかこんな不満が高まっていた。

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