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フィリア2

[582]  紫幸 燈子  2007-12-10投稿
午後の授業中、美紅はずっと上の空だった。先程の【初恋】を思い出していたから…。
ぼんやりと虚ろな感じで、美紅は窓の風景を眺めた…そして…まだ鮮明に残っている…愛おしい“父親の亡骸”を頭の中に蘇らせる…。また、背筋がゾクッと鳴る。怖いから、鳴るのではない…。コレは…快感だ…。美紅は、頬を赤らめる。桜色の唇を噛み締め…はぁっ…と甘い吐息をもらした…。
“もう一度…見てみたい…。”

最近、そんな事を思う様になってきている自分に、美紅は多少【恐怖】を覚えた。いつか…死体を見たいが為に、本当に…自分の手で、誰かを…殺してしまうかもしれない…。そう思ったからだ。

キーンコーン…と授業終了のチャイムが鳴る。それと同時に、親友の晶(ヒカリ)が美紅に駆け寄って来た。

「みーくっ。今日暇?」
「…え?」

晶の片手には、映画のパンフレットが握られている…。晶が、えへへ〜と笑いながら、そのパンフレットを美紅に見せてきた。

「コレ、観に行かない?」

映画の内容は、かなり古典的なラヴストーリーだ。美紅は、申し訳無さそうに両手を合わせて晶に言う。

「ごめんね。今日は…家に早く帰って…洗濯とか…済ませたいの。」

「…あー…そっか…。美紅って、一人暮らしだもんね」

残念そうに晶はパンフレットを鞄にしまい込んだ。苦笑いをしながら、残念〜。と呟くのを美紅は、聞き逃さなかった。

「一人暮らしって、もっと楽なのかと思ってたけど…美紅を見てると、違うなぁって思うよ。感心する〜…。」

晶は、美紅の顔を見ながら、そんな事を言った。美紅は、愛想笑いをしながら、そんな事無いよ?とボソッと呟く。
一人暮らしと言っても…美紅が住んでるアパートの家賃は、母親が支払ってるし、生活費も…ある程度は、送られてくる…だから、大して“大変”というワケでは無い。

「どうして、一人暮らししてるの?珍しいよね…高2で一人暮らしなんて。」

セミロングの髪を指で梳きながら、晶は不思議そうに美紅を伺った。

「えっ?…えと…自立…の為かな…。」

やっと出てきた“偽りの理由”
ー…本当の理由は…絶対言えない…。
美紅はギュッとキツく鞄を持つ手に力を入れた。
美紅が、一人暮らしをしている“本当の理由”それは…父親の事に関係する。

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