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バレット・シャーマン 2-1

[368]  神魂  2007-12-10投稿
俺が病室のベッドで正気に戻ったのはあれから八日後のことだった。
救護された時の俺は一時ひどく錯乱していたらしく、それこそ『病気除隊』できそうなほどだったらしい。

外傷の方は、軽傷とはいかなかったが、コヴァルスキー伍長が俺の機体を誤射して大破させてくれたお陰で、腕に後遺症が遺った程度でおさまっている。

俺以外は全員『奴』に殺られた。1分もかからなかったと思う。
真っ先に殺られたのが隊の前方にいたヘアウッド曹長だった。
回避行動をとる間もなく
コクピットを『抜き手』でぶち抜かれた。
俺達が阿呆面提げて呆気にとられているのを嘲笑するように、『奴』は曹長の機体を踏み台にして高々と跳ね上がり、20mm機関砲の俯仰角では捕捉できない高度まで上昇。
そして、無数の雨粒を引き連れて中尉の機体にダイブした。

伍長がどう殺られたかは知らない。
さっきも言ったが、伍長は隊長を踏み潰した『奴』に向けて20mmを乱射、射線上にいた俺の機体は煽りをくって大破し、そのせいで中の俺は、三途の川の花畑で脱衣婆に身ぐるみ剥がされかけるハメになっていたのだから、知りようがない。

もちろん、伍長を恨んじゃいない。
お陰で『奴』が『お目こぼし』してくれたのだから。

まあ、撃ち込まれたのがATMだったら、ちょっと泣いてたかもしれないが。


閉められたカーテンの隙間からは、うっすらと一筋の光が仄暗い個室に差し込んでいる。
俺はあのとき感じた『光』のことを思った。
あれが何だったのか、という根本的な疑問も勿論ある。
だが、それ以上に俺の心を満たしていたのは、あのまま『ひとつ』になっていたら『俺』はどうなっていたのだろうという好奇心と、そしてなにより──。

「ん?」

俺の思考を邪魔するように不意に病室のドアがノックされた。

「入ってます」

検診までまだ時間がある。軍医や看護士ではないはずだ。

「そう、それはちょうどよかった」

スライド式のドアを開けてハスキーな美声とともに入ってきたのは、やはり白衣の天使ではなかった。
むしろそれとは対称的な、漆黒の軍服を着た白人の女──。

その隆起の控え目な胸元には、大尉の階級章があしらわれていた。

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