夢負人?
夢路は震える田上を一瞥してからどこまでも続く水の道を目で追った。
「やっばり出ちまったか」
思いもよらない侵入者の連続にピエロ達は身を寄せ合い動揺している。
「何でここに……」
「どうも俺が寝てる間に依頼人が来てたらしくてな。お陰で今月ピンチなわけよ」
「自業自得でしょ」
「依頼料よろしく」
夢路の緊張感のなさに悠斗の体の力が少し緩んだ。何より田上の夢に姿を現した事が、夢負人という仕事を請け負っている何よりの証拠となったからだ。
「お前俺の忠告守らなかっただろ」
何を言われても感情的になるな。頭の中では理解していたが、人の感情はそんなもので制御出来るものではなかった。
「お前と友達の夢がリンクしてるのが何よりの証拠だ」
「リンク……?」
現れた時夢路は床に流れる水を悠斗の夢だと言った。確かに覚えはある。毎日見る夢と酷似していた。けれど一つだけ違う点があった。
「こんな普通の水じゃなかった。もっと生温くて……」
「今に解る」
言葉の意味を理解出来ず悠斗は夢路の横顔を見ていた。
『忘れタい。悲しいヨ』
全く同情する気のないピエロ達。悠斗が怒りを露わにする度に水は水位を上げ波打った。
「あのピエロに何で目がないか知ってるか?」
言われて初めて気づいたが、口や鼻、手はあれど目が一つもない事を知った。
何故と言われ考えるも到底答えに行き着く気がしなく、悠斗は夢路に答えを求めた。
「奴らは盲目の道化師という下級妖夢だ。人の罪悪感を主食にし、夢に現れては迷いのある心をはやし立てる」
「目がない理由には……」
「人が一番罪悪感を感じるのは目で記憶した物が多い。友達も目の前でお前が怪我をするのを見てお前が苦しむ姿をその目で見てきた」
見たくない。けれど見ない事など出来ない。思い出される光景は目に焼き付いたまま何度も何度も繰り返され田上を責めた。
「こんな目なんかなくなっちまえ!っていう心の現れだな」
そんな風に田上が感じていたと知り、悠斗は何も言えなくなった。
助けたかった。解放してやりたかった。けれど自分がそうする度に親友を傷つけてしまう。どうやっても追いつめてしまう。
「悠斗……」
蚊の鳴くような声で悠斗を呼んだ田上。駆けより背中をさすってやった。
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