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僕と僕で一人分…4

[297]  悠月亜夜  2007-12-12投稿
自分の会計を済ませて振り返ると、希さんは店を出ようとしていた。
とっさに追いかける!自分でも何でそんな行動をしたのか分からない。

…今・声を掛けなければ、もう会えるとは限らない。
希さんが何処に住んでいるかも、それが近所かも僕は知らないし…僕の中でもう一人の僕が『無駄な事して…』と、ため息をつく。

でも、体が勝手に動いた。
『心臓が口から出そう』ってこういう感じなんだろうという位、心臓をバクバクさせながら追いかける。
「あの!!すいません…ちょっと良いですか?」
希さんが不可思議そうな顔で振り返る。
当たり前だろう…いきなり知らない奴に声を掛けられたんだから。「あの!僕…えっと…さっきレジで後ろだった…」
言葉が詰まる。気の利いた言葉が全く出て来ない。意味不明な台詞しか出て来ない。

「あの…大丈夫ですか?ゆっくりで良いですよ。私に何かご用ですか?」と、いきなり声を掛けた怪しい僕を気付かってくれる。
周りは夕方で少し薄暗くなって来ている。

「すいません…その…僕、すみとって言います。江森澄人。初めて会った奴にいきなり名前言われて困るでしょうが、どうしてもお話しがしたくて!!」
一息に喋る。

「初めましてじゃ無いですよ」
と、少し笑みが込められた声が返って来た。…え?
「今まで何度もこの本屋でお会いしてるんですよ?いつも真剣に本を探してたみたいだから、気が付かなかっただろうけど本取る時にさりげなく避けてくれたり、落ちそうな本整えたりとかしてらっしゃいますよね」

…僕を知ってる?
しかもそんな、小さな事で?
一瞬思考停止状態。
それから、じわじわと嬉しさが込み上げて来る。
「ところで…あの…私は何で止められたの…かな?」
希さんの声で、我に返る。
考えて無かった!でも何か喋らないと!!

「その…あっと…僕、さっき貴方を見て格好良いなと思って…あ!女性に格好良いは変ですよね…でも、本に優しくて素敵な人だなって思って…お話しがしたくて、今しか無いと思って声掛けちゃいました!」
―っ!!本っ当に、もっと何か良い言葉無いのか?
恐る恐る希さんを見てると、ふわっと笑って「ありがとうございます」
…え?てっきり、怪しい奴だと思われて避けられるのを覚悟してたから、驚いた。

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