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MURASAME

[497]  あいじ  2007-12-13投稿
平将門21

大光明は舞いを止め、鎧武者を見上げた。
既に本体を失い全ての力を無くした鎧武者は消滅するよりない。
「思えば殊勝なことよ。平将門はこの帝都の守護神と云ってもよいのじゃから」
と、後になって大光明が語ったと云う。
鎧武者消滅とともに帝都中に群れていた水虎や亡者たちもいつしか消え去り、上野と渋谷の狛犬も戻った。
「街が戻っていく…!」
「違う。帝都の記憶が蘇ったのだ。再び霊的な守護が復活すれば帝都はその本来の姿を再現できる。帝都東京がこの国の中心であるという証拠だ」
瓦礫から破壊された全てのモノがもとあった箇所へと戻り帝都東京は徐々に元の姿を取り戻した。恐らくは人々の記憶にもこの焦土は残らずに再びいつもと変わらない帝都東京が始まるのだろう。
「京介…」
「何をしている。早く幸司の所へ行ってやれ。あいつの事だ、今頃ボロボロだぞ?」
可王が微笑む。
大光明は竜助を急かすと大手町へ向かうよう指示した。
「儂も行くかの…礼はいわん。とっとと消えるがよい」
大光明が踵を返し可王に背を向ける。再び振り返った時にはその黒依の姿はどこにもいなかった。


幸司は塚の前に倒れているのを二人に見つけられた。不思議なことに無傷だった。
「何故…将門は復活したのでしょう?」
誰とは無しに竜助はポツリと呟いた。
「神が…蘇るからじゃ…」
「神?」
「云わば…西洋におけるゼウスであり、日本におけるイザナギ・イザナミのような存在…名前などないのかも知れんがな…」
大光明はいつもとは違う口調で竜助…と云うよりは自分に言い聞かせるような感じで静かに呟いた。
もう将門塚は何も示すことはない。
こうして全ては終結を迎え将門塚は今もひっそりと帝都東京を見守っている。


平将門 終

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