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ブランシールの魔女・第2術・

[366]  紫幸 燈子  2007-12-14投稿
…子山羊を探して、何時間になるだろうか…?
青年は、額の汗を片腕で拭うと深い森を見渡した。
…静寂の森だ…。

青年が、そんな風に思った時…カサッと青年の脇に茂る草むらが揺れる。青年は、びくっと身体を竦めた。また、汗が溢れてくる…。
子山羊か…?それとも…熊等の獣か?否…もしかしたら……

…【魔女】…?

喉が、異様に渇くのを感じる。青年は、ゴクリと唾を飲み喉を鳴らした。
ガササッ。

また草むらが揺れる。青年は、怖くて動けない。自分が、こんなに臆病だったとは…と、心の中で嘆く。ガササッと、また揺れる…。青年は、有りっ丈の勇気を振り絞って…草むらの方へ歩み寄る…。そして、草に手を掛けようとした瞬間…

「コラ!逃げるでない!」

…女の子の…声?

青年は、恐る恐る草の中を覗く…

「?!」

そこに居たのは、ずっと探していた子山羊と…一人の少女…。
ホッと…何故か、青年は胸を撫で下ろした。

「暴れるな!夕飯!」

「…?!勝手に夕飯にするな!」

少女がそう叫ぶと、青年は思わず声を、あげてしまった。その声に気付いた少女が、長い漆黒の髪を翻しながら、青年の事を見た。
…美しい顔をしている。瞳は、髪と同じ漆黒色…。色白でほっそりしている。少し、気の強そうな表情も愛らしい…。

青年が、そんな事を考えていると、美しい少女が口を開く。

「貴様は、誰だ?」

表情通り…偉そうな口調だ…。
と青年は、思った。無言のまま見つめていたのが、カンに障ったのか、少女は少し声と口調を荒げる。

「オイ!貴様!聞いておるのか?!」

「えっ?!」

腕組みをして、こちらを睨み付けているのに、青年はやっと気付いた。

「そっ…その子山羊は、俺のなんだよ」

「…貴様の?」

キロリ。と少女は、青年を見上げつつ、くりっとした瞳を細め問い掛ける。

「そうだ。メイは…その子は、俺のなんだ。」

「!」

今度は少女の瞳が、大きく見開かれる。そして、フッと微笑を浮かべた

「そうか…この夕飯の名は、メイというのか…」

“夕飯”という単語に、少しイラッとし反論しようとしたが、言葉が出なかった。

「私と…同じ名だ…。」
そう言うと、少女は優しく子山羊の頭を撫でた。

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