4の呼吸?−?
「ごめんね、カエデ。また無理させちゃって・・・。」
その言葉は本心からではなかった。
「ううん、別に気にしてないから。お父さんだって大変なんでしょう?」
小野寺家は最近この町に越して来たばかりだ。
父親の小野寺 亮(リョウ)が社長を務める『花匠』という株式会社の本社移転の際に大阪からやってきた。
また、妻である小野寺 由美(ユミ)旧姓、山本 由美は亮の秘書をつとめていた。社内からは計略結婚だとか、亮の金目当てだとか色々と噂が広まったが、由美は子供を産むことで会社を辞め、自分が本気であることを半ば強引にアピールしたのだ。
そうして産まれたのが楓(カエデ)だった−−−
楓は真の犠牲者だった。父親と母親に振り回され、ろくに友達も作れないでついに小学生最後の夏が終わろうとしている。
「今日は楓ちゃんの入る学校に行って、先生からの説明を受けて、クラスに入るのは明日からねぇ、それから・・・」
楓は出来るだけ由美の話しを無視していた。朝からそんな話を聞きたくないといった感じで母に聞こえないように小さくため息をついた。
「説明は10時半ごろだから、10時には家を出ようね。」
「うん、じゃあそれまで部屋にいていい?」
「いいわよ。そのかわり、時間が近づいたら身支度をしておいてね。」
なにも答えず、楓は二階にある自分の部屋に戻っていった。
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