セピアの空?
鳥の鳴き声が聞こえたと思ったら、依空の頭上を雀が二匹飛んで行った。
起き上がり前方を見渡すと、来た事も見た事もない場所だった。
「ここ……どこ?」
自分でも驚く程冷静だったが、人ひとり見あたらない事に急に不安になってきた。
確かに自分は絵画展にいた。懐かしい絵に魅入られ目を閉じた所までははっきり覚えている。
しかしその後どの様にしてこの原っぱまで来たのか全く記憶になかった。
ずっと向こうには林が見える。そこまでは座っている依空のお尻を隠す程度に伸びた、青々とした雑草が生えていた。
不思議と汚くはない。ゴミもなければ土も乾いていて服にこびりつく事はなかった。
少しの間、あまりにこの場所がのどかで呆けていたが、絵画展に一緒に行った家族がいた事を思い出した。
きっと心配しているだろう。今頃警察でも呼んで騒いでいるかもしれない。
早く電話して安心させなければと依空は立ち上がった。
その直後、後頭部でカチリという音がして依空の体は硬直した。
刑事ドラマでよく見たシーン。誘拐犯が銃を突きつけ脅す光景が頭を過ぎった。
振り向かないまま両手を上げた。抵抗しないという合図のつもりだったが、予想外の言葉が飛んできた。
「……何をしている」
まだ声変わりを終えていないような幼い声に驚き振り向くと、依空と同じ背丈の少年がじっとこちらを見ていた。
真っ白な肌に金色の髪が栄え、民族衣装のような物を着ていた。手には弓が握られ、変わらず依空の頭を狙っていた。
「へ、ヘルプミー」
中学生の依空にとって、これが語学の限界だった。
脅える依空をいぶかしげに見ると、少年はぽつりと言った。
「お前……アメリカ人だな」
「……は?」
真っ黒な髪と黄色い肌を見て東洋人以外に勘違いする人間を初めて見た。「……違うのか?」
ただのアホなのだと判り手を下げた。
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