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奈央と出会えたから。?

[1021]  麻呂  2007-12-19投稿
次の日俺は、派遣会社の担当者の携帯へ電話をした。

『もしもし?北川さんですか?僕、先日工場オペレーターの仕事の案内を頂きました、松田 智也と申しますが‥。』

問い合わせた結果、明日にでも工場見学をして、先方の担当者との話が進み次第、勤務日時が決定すると言う事だった。
今までの俺なら長期の仕事は即お断り。
日雇い作業員や街頭のチラシ配りにティッシュ配り。大型連休前になれば交通量調査など、単発の仕事ばかりを選んでいた。以前から定職に就きたいという希望は強く持ってはいたが、受ける会社は悉く不採用だった。
そのうちにだんだん定職を探すのが面倒になり、ズルズルと“ネットカフェ難民”と言う落胆した生活を続けるハメになったのだが、
今思えば、そもそも俺自身が職探しに真剣に取り組んでいなかったのだ。

“面倒臭がり”で、“怠け者”。

“常に無気力”で
“やる気無し”。

ちょっとでも目の前に困難が立ちはだかると、目を背けて逃げてしまう。

こんな俺の様な無気力人間を採用してくれる奇特な会社の存在は有り得ない。


そうだ。いくらこんな俺でも、そんな事位分かっていた筈だ。

ならば俺は、このネットカフェ生活を好んで選んでいたと言う事になる。


いや、そんな筈はない。

俺は少しでも誰かに認めてもらいたかったのだからーー。


否定され続けた人格。

俺の存在が一体何なのか、誰かに教えてもらいたかったのだからーー。


暴走して迷い込んでしまったのだ。


出口の見えない迷路にーー。


もしかしたら、狂って暴走して止まらなくなってしまった歯車を誰かに止めてもらいたかったのかも知れないーー。


その迷路を長い間彷徨い続け、今やっと一筋の光が見えた。

その一筋の光を頼りに俺は出口に向かい、今まさにその迷路から脱出しようとしている。


長い長い道のりからーー。


今‥‥‥。

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