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天の詩?

[560]  Joe  2007-12-20投稿
男の合図で女は地面に倒れた。男は小さな白い硝子玉を手にし、懐から今度は赤い布をとりだした。
布はまたひとりでに動き、硝子玉を包んで女の首に巻き付いた。
それを終えるとスルスルと自分の手を伸ばし新八の首を押さえつけツ
と寄ってきて、
「この女、くれてやる。ただし、お前にではない。だれにくれてやるかは、この女が決める。」
男は、奇妙な顔をさらに歪ませ、
「女を殺したりすれば、」
と後ろの本堂の方をちらりと見るふりをした。
「あそこにいる全員の命がなくなると思え。」
男は、そのままの恰好で地面へと吸い込まれていった。
新八はやや呆然としていたが、やがてはじめて気がついたように女を抱えあげ、寺の母屋にいた坊主にことわって、空部屋に放り込んだ。
どっ
と汗がでた。その汗を拭い、本堂へ駆け戻った。
戸を開けると、わずか四人だけとなっている。
「やぁ、永倉さん、ずいぶん長い用でしたね。」
やや幼さを残した顔がきらきらした笑顔を見せている。
「長い?」
あの出来事は新八にとってわずか十分たらずの事のように思えるから、その言葉が不思議でたまらない。
幼い顔はえ?と笑顔を崩した。
「いやだなぁ、あれから一刻はたってますよ。」
再び笑顔に戻る。
「そうかい。」
とだけいうとあとは続けずに座った。
程なく五人は宿舎へと帰る事にした。新八は宿舎に着くやいなや、部屋へ行こうとする土方を呼び止めた。
「ちょっといいか?」「うん?」
と、土方は珍しく顔に表情をみせた。
黙って宿舎を出、道すがら新徳寺での出来事を話した。
土方は最初は不思議そうだったが終いには真剣に聴いていた。新八が嘘をつかない事を知っているし、こんなに上手い嘘がつける男ではない。
着いた。
寺へと入り母屋に向かう途中で二人は足を止めた。
「・・・・。」
「・・・・。」
黙って振り返ると、そこにあの無邪気な笑顔の男が立っている。草の葉を一枚口にくわえ、それをにちゃにちゃやりながらにこっとしている。


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