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フィリア4

[483]  紫幸 燈子  2007-12-24投稿
下校する時、美紅はいつも独りで帰る様にしている。死体を“想い耽たい”から。
なのに…“今日”は…違う。美紅の後ろをつけてくる人がいる。

…誰?

美紅が、不審に思い、足取りを少し速めた。すると、後ろの人物の歩く速度も速くなる。

…私の後をつけて来てる?それとも…

美紅は、不意に立ち止まり、電柱に貼られたポスターに眼をやった。
…こうして、立ち止まってみて、私を通り過ぎたら、私の勘違い…。

美紅は、さほど興味の無いポスターの内容を見つめながら、そう思った。だが、後ろの人物は、通り過ぎない…。
急に美紅が、立ち止まったから、後ろの人物は…あっ。と思わず声をあげる…。美紅は、“その声”に聴き覚えがあった。

「…。」

無言のまま、美紅は後ろの人物を見た。

「…小田…君?」

「あ…ごめん…つけるつもり…無かった…んだ…。」

…何も言っていないのに。
美紅が軽く溜息混じりで、ジッと美紅をつけていた人物…小田久史(おだひさふみ)を見た。彼は、顔を染めて俯きシドロモドロして“言い訳”めいた事を言っていた。

「私に、用?」

首を軽く傾げて、小田に問う。小田は、益々顔を染めて…

「あ…あのさっ…み…美紅…さん…」

それを境に、彼の口が止まる。暫く無言のまま、お互いを見つめ合っていた。
…時間の…無駄だわ。
美紅の心は、段々苛つきを感じ始めていた。普段の今頃は…帰りながら、“美しき父の亡骸”を想い出して、うっとりと耽っている筈だったのに…。返して…私の貴重な時間を…。

美紅の眉間にシワが寄る。

「用…無いなら…私は、これで。」

軽くお辞儀をして、小田から顔を背けた。その時“待って”との声と同時に、ぐいっと腕を掴まれた。
…気持ち悪い…。

美紅は、一瞬で小田の手を払い除けた。小田の行動が気持ち悪いのでは無くて…生暖かい“生きた人間”に触れられた事が…気持ち悪かった…。

「…美紅さん、帰宅部だよね?」

小田が、払い除けられた手をギュッと握り締めて美紅を見つめ言った。

「…?」

だから?という表情で、美紅は緊張しまくっている小田の顔を見返した。

「…せ…生物部…入らないか?」

別名“変人部”何故、自分が誘われたのか美紅には…解らなかった。

感想

  • 8234: 作者の紫幸です。このお話を読んで下さった方々、ありがとうございます。投票してくださった方、ありがとうございました。 [2011-01-16]

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