小判 第6話
旦那は女中を呼んで何やら包みを二つ持ってこさせて巳之吉(みのきち)と為吉(ためきち)にわたした。
「賞与には少し早いがお前達には特別だ。無駄遣いをしないようにな」
「へい、ありがとうございます」
巳之吉と為吉は二人口をそろえて旦那に深々とお辞儀をして礼を言うと懐に包みをしまってお燗を持ち出した。
巳之吉は為吉を屋敷に置いてお桔(おきち)と酔いざましがてらに少し静かな表通りを歩いていた。
「巳之吉さん、ありがとう。20年以上もはなればなれになっていた妹とも会えたし、私これで…」
「これで、何だよ」
「……巳之吉さんをお婿さんに迎える決心がついたわ」
「お桔ちゃん、藪から棒に何言いだすんだよ…いいのかいオイラなんかでよ」 お桔は何も答えずに体を巳之吉の胸元によせ、巳之吉は片手をそっと肩において空を見上げる。まるで現代のイルミネーションのように星空が綺麗で二人の前途を祝福しているようであった。これが江戸時代のクリスマスだったのかは定かではないが、あの日にどこからともなく投げ込まれた小判が巳之吉に幸せをもたらしたであろうことは間違いないようであった。
(完)
「賞与には少し早いがお前達には特別だ。無駄遣いをしないようにな」
「へい、ありがとうございます」
巳之吉と為吉は二人口をそろえて旦那に深々とお辞儀をして礼を言うと懐に包みをしまってお燗を持ち出した。
巳之吉は為吉を屋敷に置いてお桔(おきち)と酔いざましがてらに少し静かな表通りを歩いていた。
「巳之吉さん、ありがとう。20年以上もはなればなれになっていた妹とも会えたし、私これで…」
「これで、何だよ」
「……巳之吉さんをお婿さんに迎える決心がついたわ」
「お桔ちゃん、藪から棒に何言いだすんだよ…いいのかいオイラなんかでよ」 お桔は何も答えずに体を巳之吉の胸元によせ、巳之吉は片手をそっと肩において空を見上げる。まるで現代のイルミネーションのように星空が綺麗で二人の前途を祝福しているようであった。これが江戸時代のクリスマスだったのかは定かではないが、あの日にどこからともなく投げ込まれた小判が巳之吉に幸せをもたらしたであろうことは間違いないようであった。
(完)
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