ばいばい、浩介 ?
さよならを言いたくなくて。
私は、嘘をつきました。
「え、お前、転校するんの?!」
浩介は、少し驚いたように、背もたれに預けていた体をがばりと起こした。
「あ、うん」
「マジかよぉ。全然知らなかったし。で、いつ引っ越すわけ?」
「家を出るのは来週だけど…準備とかがあるから、学校は、今日が最後、かな」
私は、なるべく雰囲気が暗くならないように気を付ける。
「は?!今日最後?!」
私の答えにがっくりと肩を落とす浩介。
私は、そんな浩介と、目を合わせることができなかった。
終礼の始まりのチャイムが鳴って先生が教室に入ってくると、私は後ろを向いていた体を前に向き直した。
浩介とは、一ヶ月前初めて言葉を交した。
たまたま、席が前後になって。
積極的に話しかけてきてくれる浩介とは、すぐに仲良くなれて。
高二になって、初めて恋をした。
毎日が楽しくて。
浩介の笑顔が大好きだった。
でも。
私はもうすぐ、東京の大病院に入院する。
生まれつきの心臓病が悪化していて。
もう、いつ退院できるかさえも、分からないらしい。
だから。
だから、今日が浩介との、本当のさよなら。
でもね、私は弱虫だから。
浩介に本当のことなんて言えない。
さよならを、どうしても、言いたくなかったから。
先生が終わりの挨拶をして、最後の学校が終わる。
それはいつもと、少しも変わりのない日常だった。
私は、浩介に「またね」とだけ言うと、鞄を持って廊下へと出た。
歩き成れた賑やかな廊下をゆっくりと歩き、靴を履き替えて校舎の出口を抜ける。
もうすぐ十一月の外は、やっぱり少し寒かった。
「美保ー!」
橙の空に、私を呼ぶ声が響く。
「浩…介…?」
振り返れば、上靴のまま走ってくる浩介の姿が。
「はあ…はあ…おま…ほん、と…待てって…」
私の前まで来ると、浩介は弾んだ息を整えた。
『ばいばい、浩介 ?』に続きます☆
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