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ばいばい、浩介 ?

[335]  木村よし  2007-12-25投稿

さよならを言いたくなくて。


私は、嘘をつきました。



「え、お前、転校するんの?!」


浩介は、少し驚いたように、背もたれに預けていた体をがばりと起こした。


「あ、うん」


「マジかよぉ。全然知らなかったし。で、いつ引っ越すわけ?」


「家を出るのは来週だけど…準備とかがあるから、学校は、今日が最後、かな」


私は、なるべく雰囲気が暗くならないように気を付ける。


「は?!今日最後?!」


私の答えにがっくりと肩を落とす浩介。


私は、そんな浩介と、目を合わせることができなかった。


終礼の始まりのチャイムが鳴って先生が教室に入ってくると、私は後ろを向いていた体を前に向き直した。



浩介とは、一ヶ月前初めて言葉を交した。


たまたま、席が前後になって。

積極的に話しかけてきてくれる浩介とは、すぐに仲良くなれて。


高二になって、初めて恋をした。


毎日が楽しくて。


浩介の笑顔が大好きだった。


でも。


私はもうすぐ、東京の大病院に入院する。


生まれつきの心臓病が悪化していて。


もう、いつ退院できるかさえも、分からないらしい。


だから。


だから、今日が浩介との、本当のさよなら。


でもね、私は弱虫だから。

浩介に本当のことなんて言えない。


さよならを、どうしても、言いたくなかったから。


先生が終わりの挨拶をして、最後の学校が終わる。


それはいつもと、少しも変わりのない日常だった。


私は、浩介に「またね」とだけ言うと、鞄を持って廊下へと出た。


歩き成れた賑やかな廊下をゆっくりと歩き、靴を履き替えて校舎の出口を抜ける。


もうすぐ十一月の外は、やっぱり少し寒かった。


「美保ー!」


橙の空に、私を呼ぶ声が響く。


「浩…介…?」


振り返れば、上靴のまま走ってくる浩介の姿が。


「はあ…はあ…おま…ほん、と…待てって…」


私の前まで来ると、浩介は弾んだ息を整えた。




『ばいばい、浩介 ?』に続きます☆


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