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Raven Curse 《序章―6》

[180]  シラ  2007-12-26投稿
それから一時の沈黙が訪れた。
ソラはフェンスに背を預け、視線をアスファルトに落としている。
それを横目に、僕は欠伸をしながら立ち上がった。湿気を孕んだ涼風が髪を撫で、心地よさを感じる。

「さっきはごめんね。私、余計な事しちゃって…」

沈黙を破ったのは、ソラの沈んだ声だった。

「私が勝手に騒いで、あんたにまで迷惑掛けちゃって…。本当にごめんなさい!」

彼女は急に頭を下げた。
その唐突な行動に内心戸惑いを隠せない。

「いや気にしなくていいよそんなの。寧ろ感謝してるし。
ていうかわざわざそんな事言う為だけに、君も教室を抜け出して来たの?」

「いや、それだけじゃないんだけど、でも…。
そう、気にしてないならよかった。」

ソラは溜め息を付いた。そして爽やかに微笑む。
彼女の事は良く知らないが、恐らくこの笑顔が本来の彼女なんだろう。不思議とそう感じさせられた。

「でさ、お詫びといっては何だけど…。これから一緒に食事にでも行かない?どうせ今日はもう、授業に出られないし。」

「は……?」

唐突な誘いに、僕は間抜けな声を出した。
だが彼女は構わず、喜々として言葉を続ける。

「あ、もちろん私が奢るからさ。それにさ、ちょっとディア君と話もしたいし。ね、いいでしょ?」

「いや、ちょっ――!」

ソラは返事も聞かず、強引に僕の腕を引っ張った。
その時、ぽつ、と頬に水滴が当たった。それは徐々に増え、散弾のように、容赦なく僕の顔や腕に当たる。
雨が降り出してきた。

「ほら、雨も降り出して来たし、ね?雷鳴も近づいて来てるし。何時までも屋上にはいられないでしょ?」

いや、それなら寧ろ出掛けない方がいいんじゃ。
そう突っ込もうと口を開いた時、ソラの表情が切迫したように強張っているのに気付いた。

「どうしたの?何か――」

僕の問いかけはやはり強引に無視された。その上僕の体は突如、真横に引力を受ける。
視界が灰色から漆黒に切り替わり、引力から解き放たれた僕は床に尻餅を付いた。

と、不意に視界が明るくなる。
見覚えのある階段に、若干錆び付いた鉄扉――そこは屋上への入口の小スペースだった。

「はあ、何とか間に合った。」

目の前の少女は、安堵の溜め息を漏らしていた。

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