彼の恋人
「これだから温室環境は外の世界を知らない人間ばかり作るから、辞めていく生徒が多いのよ!」
今朝も弟に学校の話題を聞かされた泉は、苛立ちをクラスの男子にぶつけている。だが、誰も「今更愚痴ってもしょうがない」素振りを見せる。「大学なら何処でもいい」と半ば投げやりになっている連中の前で愚痴を溢すのが虚しい。
進学クラスは、泉の様に割りと勉強熱心なタイプとそうでないタイプとの間に深い溝が横たわる。前者は成成獨國武を、後者は日東駒専と大東亜帝国をそれぞれ目標とする。当然仲は悪い。勉強熱心なグループは、卒業しても投げやりなグループと関わらないように志望校を目指しているのだ。
「そういうのを『類は友を呼ぶ』とか『朱に交われば赤くなる』とか言うのよね〜」
昼休み、みくは泉の愚痴に共感して深く頷く。
「これも卒業までの我慢よ! 幸せになりたきゃ悪い縁と断ち切れないもん」
泉の意思は相当固い。本音を言えば、修学館に受からなかった人がいなければ頑張れなかった。暁だって例外ではない。泉は更に話を続ける。
「卒業して、桜庭と一切関わらなくても罪にならないよね? って事は、桜庭の先生と卒業生のどちらかと結婚しなくていいんだ! どうして今まで気が付かなかったンだろ」
みくには新鮮な発見だった。本音を言えば、修学館に受からなかった人がいなければ頑張れなかった。暁だって例外ではない。みくは泉に感謝せずにはいられない。しかし……。
「さっきから黙って話を聞いてりゃ、この友情を断ち切ってもいい事にならないか? 自分の目標達成のために友情の皮を被って、人を利用している様に聞こえるんだけどな!?」
泉の考えを歪曲して捉えた暁に噛み付かれた。すかさず惇が制止に入る。
「暁、言い過ぎだって!」
惇のおかげで事無きを得たものの、みくは忽ち幻滅してしまった。この学校には恋愛がなければ友情もないのか?
しかし、みくは決意した。
「思い通りにならず不貞腐れている連中と関わるのは、卒業したら金輪際縁を切ろう」
修学館が文化祭に向けて動いている時、桜庭は閉鎖的で牧歌的な空気が流れている。しかし、桜庭の生徒は他所の空気に触れ、近付く事はできない。それはやがて現実となる。
今朝も弟に学校の話題を聞かされた泉は、苛立ちをクラスの男子にぶつけている。だが、誰も「今更愚痴ってもしょうがない」素振りを見せる。「大学なら何処でもいい」と半ば投げやりになっている連中の前で愚痴を溢すのが虚しい。
進学クラスは、泉の様に割りと勉強熱心なタイプとそうでないタイプとの間に深い溝が横たわる。前者は成成獨國武を、後者は日東駒専と大東亜帝国をそれぞれ目標とする。当然仲は悪い。勉強熱心なグループは、卒業しても投げやりなグループと関わらないように志望校を目指しているのだ。
「そういうのを『類は友を呼ぶ』とか『朱に交われば赤くなる』とか言うのよね〜」
昼休み、みくは泉の愚痴に共感して深く頷く。
「これも卒業までの我慢よ! 幸せになりたきゃ悪い縁と断ち切れないもん」
泉の意思は相当固い。本音を言えば、修学館に受からなかった人がいなければ頑張れなかった。暁だって例外ではない。泉は更に話を続ける。
「卒業して、桜庭と一切関わらなくても罪にならないよね? って事は、桜庭の先生と卒業生のどちらかと結婚しなくていいんだ! どうして今まで気が付かなかったンだろ」
みくには新鮮な発見だった。本音を言えば、修学館に受からなかった人がいなければ頑張れなかった。暁だって例外ではない。みくは泉に感謝せずにはいられない。しかし……。
「さっきから黙って話を聞いてりゃ、この友情を断ち切ってもいい事にならないか? 自分の目標達成のために友情の皮を被って、人を利用している様に聞こえるんだけどな!?」
泉の考えを歪曲して捉えた暁に噛み付かれた。すかさず惇が制止に入る。
「暁、言い過ぎだって!」
惇のおかげで事無きを得たものの、みくは忽ち幻滅してしまった。この学校には恋愛がなければ友情もないのか?
しかし、みくは決意した。
「思い通りにならず不貞腐れている連中と関わるのは、卒業したら金輪際縁を切ろう」
修学館が文化祭に向けて動いている時、桜庭は閉鎖的で牧歌的な空気が流れている。しかし、桜庭の生徒は他所の空気に触れ、近付く事はできない。それはやがて現実となる。
感想
感想はありません。