一人の距離
「………ん。わかった。…うん。仕方がないし、いいよ。…じゃあね。」
『ゆり子、ごめん』
と、携帯から聞こえる必死の謝罪の声を遮って、私――小林ゆり子は「電源」ボタンを押した。
口に浮かぶのは、好きな人とさっきまで話せた余韻の笑み。
その口から漏れるのは…一年分の溜め息。
…久しぶりに会えると思ったのに。
大学進学のために、群馬から大阪に出てきて、もう一年が経とうとしてる。
漠然と周りが行くから大学を目指して、
さびれた田舎から飛び出したくて、
都会のキラキラした世界にただ単純に憧れて、
『新しい自分に出会うんだ』とわざわざ知り合いの少ない大阪を選んで、
高校からの恋人の誠(まこと)との遠恋も『なんとかなるっしょ』とカルく考えて。
そう。なにもかも、若すぎた。
携帯も私も、ベッドに投げ出した。
誠は私より一つ上。高校卒業と同時に地元の工場のラインに就職した。
就職後も私が高校在学中はメールや電話はもちろん、お互いの誕生日やクリスマスは一緒に過ごした。
でも………。
大阪に来てからは正月に会っただけ。
メールや電話も、群馬にいたときより減った気がする。
そんな中での私の誕生日。2月16日。
『明日、会いたい』
期待を込めてそんな一言を勇気を出して言ってみたけど、帰ってきたのは
『ごめん。仕事だから』
普段なら頑張ってほしいって思えるのに、今日だけはすごくそっけなく聞こえた。
「やっぱり…駄目なのかな…」
スイッチのついてないテレビを見つめると、モノクロームの部屋に情けない顔をした私が、ベッドに埋もれていた。
『ゆり子、ごめん』
と、携帯から聞こえる必死の謝罪の声を遮って、私――小林ゆり子は「電源」ボタンを押した。
口に浮かぶのは、好きな人とさっきまで話せた余韻の笑み。
その口から漏れるのは…一年分の溜め息。
…久しぶりに会えると思ったのに。
大学進学のために、群馬から大阪に出てきて、もう一年が経とうとしてる。
漠然と周りが行くから大学を目指して、
さびれた田舎から飛び出したくて、
都会のキラキラした世界にただ単純に憧れて、
『新しい自分に出会うんだ』とわざわざ知り合いの少ない大阪を選んで、
高校からの恋人の誠(まこと)との遠恋も『なんとかなるっしょ』とカルく考えて。
そう。なにもかも、若すぎた。
携帯も私も、ベッドに投げ出した。
誠は私より一つ上。高校卒業と同時に地元の工場のラインに就職した。
就職後も私が高校在学中はメールや電話はもちろん、お互いの誕生日やクリスマスは一緒に過ごした。
でも………。
大阪に来てからは正月に会っただけ。
メールや電話も、群馬にいたときより減った気がする。
そんな中での私の誕生日。2月16日。
『明日、会いたい』
期待を込めてそんな一言を勇気を出して言ってみたけど、帰ってきたのは
『ごめん。仕事だから』
普段なら頑張ってほしいって思えるのに、今日だけはすごくそっけなく聞こえた。
「やっぱり…駄目なのかな…」
スイッチのついてないテレビを見つめると、モノクロームの部屋に情けない顔をした私が、ベッドに埋もれていた。
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