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奈央と出会えたから。<23>

[1035]  麻呂  2007-12-29投稿
奈央は一言そう頷くと、ぽつり‥ぽつりと話し始めたー。



* * * *



あたしの実の父親は、あたしが物心付く前に病気で亡くなったのー。



母はその後直ぐに再婚したんだけど、
その時あたしは小学校一年生になってた。



『奈央。この人が新しいお父さんよ。』


『奈央ちゃんて言うのかぁ‥。よろしくね。』



『ほら奈央!!挨拶しなさい!!』



『いや。奈央のお父さんは天国へ行ったんでしょ?お母さん言ってたもん。奈央のお父さんは一人しかいないもん!!』


『これ奈央!!待ちなさい!!』



あたしはまだ子供だったし、母の再婚と言う現実を直ぐに受け入れられなかったの。



新しい『父親』は、そんな懐かないあたしにも優しく接して来た。



それでもあたしは、この新しい『父親』に、心を開く事は無かった。



だからこの『父親』にとってあたしは、さぞかし可愛げの無い、小憎らしい娘だったに違いない。



けれど、これ程までに懐かないあたしに何故この『父親』は、こんなにも優しく接してくれるのかー。



その一つの疑問が、いつもあたしの心に引っ掛かってた。



もしかしたら、あたしは酷くひねくれた最低な人間なのかも知れないー。



こんなにも優しく接してくれる『父親』に対して、頑なに心を閉ざしているのだからー。



小学校三年生になったある日、あたしは少し自分に反省して、この『父親』に対して、



“心を開いて行かなければならない。”


そう思い始めたの。

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