処刑生徒会長第四・5
――《私立k学院生徒会長室》――
港リリアの求めに応じ、和平交渉の細部は部下達に任せて、九重モエ達はチャペルからここまで移動して来た。
会長卓に座った九重モエはさっそく尋ねた。
『それで、お話は?』
『その前に二つばかりお願いしたい事があります』
港リリアは立ったままだったが、更に表情もこわばりっ放しだった。
『何でしょう?』
『今からお話する内容は絶対に口外しないで下さい―これが一つ。二つ目はお人払いをお願い致します』
『人払いって―ここにいる霧島も駄目なのですか?』
大振りで高級そうな九重モエの卓の側には長身の男子生徒、霧島ユウタが付き従っている。
彼女の信頼するボディーガード役の二年生だ。
だが、それで港リリアも信頼するのかと言えばどうやら別問題みたいだった。
『もちろん彼もです』
九重モエは不服そうだった。
『そこまであなたが指図する権利がどこにあるのです?』
確かに九重モエが不満を示すだけの根拠はあった。
だが―\r
『お気持は最もです―ですが、もし会長がこの要請に応じてくれないのなら、この話は終わりです』
港リリアは脅しとも取れる言い回しをあえてひけらかして見せた。
『和平がですか?』
慎重そうに霧島ユウタが問うてみると
『和平はお互いの実務者達に任せました。今更破りはしません―私がこれから提案するのはそれ以上の事です』
命がけの―そう港リリアは付け加えて、モエと霧島はお互いに顔を合わせた。
『どうも副会長殿には尋常ならざるご決意があるご様子―会長、私は下がらせてもらいます』
霧島は有能な男だ。
即座に空気を察して彼は自ら廊下へと出て行った―\r
今頃、第三中学校・私立K学院両校の渉外委員会の面々は、チャペルの中で激論を交しているのだろう。
生理と心理に基づく二種類の汗をかきながら―\r
そして会長室には二人だけが残った。
『こんな格好で話しても仕方ないわね』
仰々しいデスクから立ち上がって、九重モエは仕切りの向こうの応接ブースへと進んだ。
言われるまでもなく港リリアもそれについて行き、二人は低いテーブルを四角く囲む形に配されたソファーに向かって腰を下ろした。
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