ティシュと商人の街?
予想外の金額にブランディはスコットを再度睨んだ。
「お前そんな金どこへやった」
「使った」
「俺の全財産だぞ!」
立ち上がりスコットに殴りかかろうとするティシュをヴェルダは必死に押さえた。
「止めておけって。まぁ気持ちはわからなくもないが、お前どっからそんな金手に入れたんだよ?」
仕方なく腰を下ろし俯くティシュ。
「働いた……」
「働いた?よくため込んだもんだ」
「早朝に新聞配達、その後牧場の手伝い……昼は工場で夜は酒場で……」
次々出てくる話に唖然とする三人。
小遣いで遊んでいるはずの年齢なのにも関わらず、寝る間も惜しんで働いていたティシュ。
当然の疑問が湧き、ヴェルダはティシュに問いかけた。
「……親は?」
「……」
俯いたままのティシュに事情を悟り、ヴェルダは頭を撫でてやった。
「悪い……偉かったな」
頭を横に振りまた黙り込んだティシュ。
「そうまでしてため込んだ金でここに何の用だ?」
「店を……出したい」
「は!?」
神妙な顔つきになっていた三人は声を合わせティシュを見た。
「お前……バカだろ」
元凶であるスコットに言われティシュは立ち上がり頭を殴った。
しかしスコットは怒るどころか笑い出し、腹を抱え転げ回った。
「スコット」
兄に睨まれ椅子に座り直したものの、こみ上げる笑いに口が空気で膨らんでいる。
「い、いいか少年」
咳払いをし、言葉を選びながらゆっくりヴェルダは言った。
「ここの入島料は知ってるな?」
「うん。200G」
「じゃあ土地の貸しだしはいくらだ?」
「貸しだし?購入じゃなくて?」
やっぱり、と苦笑いになるヴェルダとブランディ。
「いいかよく聞け。この街で土地を購入する事は出来ないんだ」
「えー!?」
「物件によるが最低でも500Gはかかる」
この街では土地は借りるもの。その代わりに市民税は取られない。
店が開きたいのであれば土地代、売上げに対する何割かの上納代、仕入れ代……掛かる金額はとても12歳の少年に賄えるものではなかった。
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