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キャッチボール

[349]  さすらいの小説家  2006-04-07投稿
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「あと一ヵ月だぜ宮館、お前調子はどうなんだ?」
ユニホームに着替えながら僕は宮館に聞いた。
「んー、いたって普通。杉は?」
やつは僕をこう呼ぶ。というより僕は野球部の同世代からは専らこう呼ばれる。「俺はねー、ある決心をしたんだな。」
「何だよ?」
「俺、最高のワンポイントリリーフピッチャーになる。絶体絶命のピンチになったときに絶対に0点で抑えるピッチングをする仕事。」
「なるほど、その間、俺は外野に入ってお前が降りたらまた俺が投げるって寸法か。」
「理解が早いな。ところで宮館、お前、MAX何キロ?」「145キロ。」
「速いな。さすがプロ注。」「杉は?」
「143キロだよ。」
「杉だって速いじゃん。」
すると、宮館は僕が片足のソックスを履くのに手間取っていることに気付き、
「はいよ。」
と、僕の手の代わりにソックスを引っ張ってくれた。「さんきゅ。」
思えば僕の仲間は皆僕が困っていると手を差し伸べてくれる。いいチームメイトに恵まれたな。つくづくそう思った。そういえば、入部当初は40人いた部員が今はもう半分以下の19人になってしまった。よく僕も辞めなかったなと思う。

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