Raven Curse 《序章―7》
ソラの提案で、僕らは今、駅前のファミレスで、遅めの昼食を取っている。
店内は明るく開放的で、清潔感のある、至って普通のファミレスだった。此処はソラのお気に入りらしく、今日のような悪天候の日はよく訪れるという。
その理由は、家に近く、また、天気の悪い日は客足が少なく、居心地が良いかららしい。
確かに先程から雨足が強くなったせいか、昼過ぎだというのに客は数えるほどしかいなかった。
しかし、彼女が人の雑多で賑やかな所を嫌っているのは意外だ。
僕が知る限り、彼女は明るく人好きの良い性格だと思う。実際、教室でも数人の友人達と、楽しげに会話したり、騒いだりしているのをよく見かける。
だがそれより、僕は未だに、先程のソラの不可解な行動が気にかかり、頭から離せずにいた。
つい30分程前、僕らは学校の屋上にいた。そこで彼女は唐突に僕の腕を引っ張り、建物内に引きずり込んだのだ。
まるで背後から猛獣か何かが接近し、それを察知してしまったかのように、あの時の彼女の表情は尋常でなかった。
まさか、雷鳴の接近に危機感を持ったとかはないだろう。
脳内で冗談を言いながら、いつもの癖で、僕は虚空を眺めて黙考していた。
「ねえ、ディア君。みんなのこと、どう思う?」
ソラは不意に、そんな質問を投げ掛けてきた。
彼女は食べかけのペペロンチーノに視線を落としながら、ゆっくりとフォークを置く。
「…どうって?」
唐突な質問に、僕は困惑気味に返答した。
「いや…、みんなディア君の事陰で悪く言ってるでしょ?だから…煩わしいとか思わない?」
ソラは視線を僕に移した。その昏冥な瞳には、否定を赦さぬ意志が垣間見えている。
「まあ、煩わしくないと言えば嘘になるけどさ。でも、覚悟してた事だし…。それに誹謗を受けるのも仕方ないよ、そりゃあ」
僕は窓外に目を移しつつ、自嘲気味に答える。
ソラは溜息を漏らした。
「そう…。可愛い顔して大人なんだね、ディア君」
「言葉は有り難いけど、褒める人間の表情じゃないよね」
僕は苦笑混じりに、皮肉を漏らす。
しかし、彼女はにこりともせず、哀感を湛えた顔で俯き、言った。
「褒めてないよ。達観してるって意味で言ったんじゃない。
諦観してるって意味で言ったの」
店内は明るく開放的で、清潔感のある、至って普通のファミレスだった。此処はソラのお気に入りらしく、今日のような悪天候の日はよく訪れるという。
その理由は、家に近く、また、天気の悪い日は客足が少なく、居心地が良いかららしい。
確かに先程から雨足が強くなったせいか、昼過ぎだというのに客は数えるほどしかいなかった。
しかし、彼女が人の雑多で賑やかな所を嫌っているのは意外だ。
僕が知る限り、彼女は明るく人好きの良い性格だと思う。実際、教室でも数人の友人達と、楽しげに会話したり、騒いだりしているのをよく見かける。
だがそれより、僕は未だに、先程のソラの不可解な行動が気にかかり、頭から離せずにいた。
つい30分程前、僕らは学校の屋上にいた。そこで彼女は唐突に僕の腕を引っ張り、建物内に引きずり込んだのだ。
まるで背後から猛獣か何かが接近し、それを察知してしまったかのように、あの時の彼女の表情は尋常でなかった。
まさか、雷鳴の接近に危機感を持ったとかはないだろう。
脳内で冗談を言いながら、いつもの癖で、僕は虚空を眺めて黙考していた。
「ねえ、ディア君。みんなのこと、どう思う?」
ソラは不意に、そんな質問を投げ掛けてきた。
彼女は食べかけのペペロンチーノに視線を落としながら、ゆっくりとフォークを置く。
「…どうって?」
唐突な質問に、僕は困惑気味に返答した。
「いや…、みんなディア君の事陰で悪く言ってるでしょ?だから…煩わしいとか思わない?」
ソラは視線を僕に移した。その昏冥な瞳には、否定を赦さぬ意志が垣間見えている。
「まあ、煩わしくないと言えば嘘になるけどさ。でも、覚悟してた事だし…。それに誹謗を受けるのも仕方ないよ、そりゃあ」
僕は窓外に目を移しつつ、自嘲気味に答える。
ソラは溜息を漏らした。
「そう…。可愛い顔して大人なんだね、ディア君」
「言葉は有り難いけど、褒める人間の表情じゃないよね」
僕は苦笑混じりに、皮肉を漏らす。
しかし、彼女はにこりともせず、哀感を湛えた顔で俯き、言った。
「褒めてないよ。達観してるって意味で言ったんじゃない。
諦観してるって意味で言ったの」
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