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粉雪の降る窓辺から・2

[304]  一宮 詩音菜  2008-01-04投稿
「もう、由良ったら、いないじゃない。見間違いじゃないの?」

 理紗子の言葉に、

「そんなはずないわよ。絶対、いたんだから!!」

 由良が意地になって言う。

「まぁ、まぁ、そんなこと、どうでもいいじゃないか。由良はちゃんと寝ていないと、また、熱が出て退院が延びるぞ」

 兄の章からそう言われて2人は黙ってしまった。兄、章が病室から出て行くと、3人は学校の話や友達の話、そして、クリスマスが近いので、クリスマスはどうするかなどの話をして過ごしたが、6時になり、由良の夕食が来たのを機に、2人は帰って行った。
 由良は個室に入っているため、1人で夕食を食べ始め、窓の方へ目をやると、まだ、雪が降っている。雪が降るのを見ながら、何故だか、さっき見た少女のことが気になってしょうがない由良であった。
 それから2日ほど経った早朝のことである。 何故か病棟の方が騒がしい。病棟と言っても病室ではなく、ナースステーションの方が騒がしいのである。
 由良の部屋はナースステーションの斜め前のため、騒がしいのがよく分かる。

『どうしたのかしら? 今、一体、何時なの...?』

 そう思って時計を見た由良だった。時計の針は5時を指している。

『もう、まだ、こんな時間なのに...』

 そう呟いて、もう一度寝直そうとした由良だったが、外があまりに騒がしいので眠れない。それでどうなっているのかと、ベッドからベッドから起き上がり、スリッパを履くと、ドアの方へと向かい、ドアを開けた由良の耳に、

「と、とにかく、警察に電話して。ああ、それと医局長の矢部先生にも電話してちょうだい。それから、これはまだ、誰にも言わないようにね」
「は、はい」

 という会話が聞こえてきた。そして、支持を与えていた看護師が振り返り、由良と目と目が合ってしまった。

「橋本さん。どう、されました?」

 目が合った看護師の質問に、

「あ、いえ。騒がしいので、どうしたんだろうと思って...」
「それなら何でもないんですよ。騒がしくしてしまって、ごめんなさいね。まだ、早いですから、もう少し休んでいて下さい」
「は、はい」

 反論できないような言い方に仕方なく病室に引っ込んだ由良が、研究棟の方で女性が死んでいて、しかも、それが他殺らしいと知ったのは、それから2時間ばかり経ってからのことであった。

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