悲しき歌は夕暮れに。
〜?〜
?
結局この日は、学校を早退した。
頭がこんがらがって、まともに授業なんか受けられるはずもない。
陽菜ちゃんの言うように、本当に元気なく見えたらしく、先生もあっさり了承してくれた。
教室を出るとき、陽菜ちゃんが「気をつけてね」と言ってくれた。素っ気なく「うん」と返し、家路に向う。
時間的にはまだ学校は始まったばかりだ。だからか、顔見知りの近所の人たちも心配して、声をかけてくれる。でも僕にはいちいち応える気力もなくて、小さく頭を下げるだけだった。
小さな川にかけられた小さな橋を渡り、やがて家が見えてきた。
リュックから鍵を取り出して、鍵穴に差し込みぐるりと回す。いつものことだ。
リビングにあるテーブルの上にあった「遅くなる」という内容の置き手紙に目を通し、夕食代としていくらかのお金があることを確認してから、自分の部屋へ入った。すぐにベッドに飛び込む。しばらくうつぶせになり、やがて顔を上げて考えた。
アユリは確かにいたんだ。アユリとの思い出は、今も僕の心に、鮮明に残っている。
それがすべて幻だったとでも言うのか。そんなのあるはずない。
次に気付いたとき、あたりは真っ暗だった。
いつの間にか、眠ってしまったらしい。
部屋の電気をつけると同時に、来客を知らせるチャイムが鳴った。
誰だろう。
居留守を使ってもいいような気がしたけど、僕は玄関へ向かった。
「はーい」
そう言ってからドアを開けた。
そこに立っていたのは、他でもない陽菜ちゃんだった。陽菜ちゃんはニコニコと微笑み、手からは小さな袋を下げている。
「陽菜ちゃん！どうしたの？」
「えへへー♪翔、ご飯食べた？」
陽菜ちゃんはさらにニコニコしながら、言った。
「まだだけど」と僕は素直に答える。
「よかったぁ〜。入れ違いになったら悲しいもんね」
言ってることが、さっぱりわからない。
「つまりね、陽菜が翔のご飯つくったげる。いろいろはなしたいこともあるし」
陽菜ちゃんのつくるご飯は、確かに美味しい。小学生とは思えない腕前なのは、この前手作りだと言う弁当をわけてもらったとき、身を持って経験している。
でも、だ。なぜ、今日になって？
話したいこととはなんなのだろう。
気になったけど、せっかくきてくれたのだ。
僕はあえて聞かずに、陽菜ちゃんを部屋へ通した。
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結局この日は、学校を早退した。
頭がこんがらがって、まともに授業なんか受けられるはずもない。
陽菜ちゃんの言うように、本当に元気なく見えたらしく、先生もあっさり了承してくれた。
教室を出るとき、陽菜ちゃんが「気をつけてね」と言ってくれた。素っ気なく「うん」と返し、家路に向う。
時間的にはまだ学校は始まったばかりだ。だからか、顔見知りの近所の人たちも心配して、声をかけてくれる。でも僕にはいちいち応える気力もなくて、小さく頭を下げるだけだった。
小さな川にかけられた小さな橋を渡り、やがて家が見えてきた。
リュックから鍵を取り出して、鍵穴に差し込みぐるりと回す。いつものことだ。
リビングにあるテーブルの上にあった「遅くなる」という内容の置き手紙に目を通し、夕食代としていくらかのお金があることを確認してから、自分の部屋へ入った。すぐにベッドに飛び込む。しばらくうつぶせになり、やがて顔を上げて考えた。
アユリは確かにいたんだ。アユリとの思い出は、今も僕の心に、鮮明に残っている。
それがすべて幻だったとでも言うのか。そんなのあるはずない。
次に気付いたとき、あたりは真っ暗だった。
いつの間にか、眠ってしまったらしい。
部屋の電気をつけると同時に、来客を知らせるチャイムが鳴った。
誰だろう。
居留守を使ってもいいような気がしたけど、僕は玄関へ向かった。
「はーい」
そう言ってからドアを開けた。
そこに立っていたのは、他でもない陽菜ちゃんだった。陽菜ちゃんはニコニコと微笑み、手からは小さな袋を下げている。
「陽菜ちゃん！どうしたの？」
「えへへー♪翔、ご飯食べた？」
陽菜ちゃんはさらにニコニコしながら、言った。
「まだだけど」と僕は素直に答える。
「よかったぁ〜。入れ違いになったら悲しいもんね」
言ってることが、さっぱりわからない。
「つまりね、陽菜が翔のご飯つくったげる。いろいろはなしたいこともあるし」
陽菜ちゃんのつくるご飯は、確かに美味しい。小学生とは思えない腕前なのは、この前手作りだと言う弁当をわけてもらったとき、身を持って経験している。
でも、だ。なぜ、今日になって？
話したいこととはなんなのだろう。
気になったけど、せっかくきてくれたのだ。
僕はあえて聞かずに、陽菜ちゃんを部屋へ通した。
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