奈央と出会えたから。<32>
数日後、母は市役所に離婚届を提出したの―。
勿論、そこには『父親』の署名もされ、捺印されていた。
これは後に母から聞いた話だけど、『父親』は最後まで、
自分の非を認めなかったって‥。
“自分は奈央に誘惑されたんだ。”
“別れるなんて言わないでくれ。
俺の会社での立場も考えてくれ。”
―どこまで腐った男なの―。
どうせ母への愛情があって、離婚したくないって言った訳じゃないんだから。
あの男は、自分の事しか考えていない最低な男―。
見栄や体裁、世間体ばかりを気にして、あたしの妊娠を知った時もオロオロしてた―。
肝っ玉の小さい男―。
あの時あたしは思ったわ。
あたしは、あの男みたいな最低な男とは絶対に結婚しない。
あたしがヴァージンを奪われて、傷つけられた事も勿論許せなかったけど、
それよりあたしは母を傷つけられた事の方が許せなかった。
母は昔から優しい人だったんだ。
誰にでも優しくて、親切で、思いやりがあって‥‥。
人情深い人だったから―。
母は周囲の誰からも好かれていた。
今思えば、あの男と再婚したのだって、本当は、あたしの為にしたのだと思う。
“奈央には父親が必要ね”って‥。
そう思って再婚に踏み切ってくれたのだと思う。
それなのに、結果的にあたしは、その『父親』に犯され、
“妊娠”“中絶”と言う体験を、若干12歳にして体験してしまった。
こんなに優しい母だから、常に自分の事よりあたしの事を考えてくれた母だから‥‥‥‥。
苦しんだと思う‥。
随分と自分を責め、苦しんだと思う‥。
あたしは大人になった今でも、母は一番尊敬している人だし、あたしが目標としている『母親像』でもある。
―でもね、あたしもまだ子供だったから‥‥‥。
自分が酷く傷ついて、心に余裕が持てなくなってしまった時、母を思いやる以上に強い感情‥‥つまり激情が生じ、時として母に当たり散らし、母を深く傷つけてしまった事もあったんだ―。
それは、あたしが中学校に入学してから始まった悲劇と同時に、母を長い間苦しめる事にもなったの――。
勿論、そこには『父親』の署名もされ、捺印されていた。
これは後に母から聞いた話だけど、『父親』は最後まで、
自分の非を認めなかったって‥。
“自分は奈央に誘惑されたんだ。”
“別れるなんて言わないでくれ。
俺の会社での立場も考えてくれ。”
―どこまで腐った男なの―。
どうせ母への愛情があって、離婚したくないって言った訳じゃないんだから。
あの男は、自分の事しか考えていない最低な男―。
見栄や体裁、世間体ばかりを気にして、あたしの妊娠を知った時もオロオロしてた―。
肝っ玉の小さい男―。
あの時あたしは思ったわ。
あたしは、あの男みたいな最低な男とは絶対に結婚しない。
あたしがヴァージンを奪われて、傷つけられた事も勿論許せなかったけど、
それよりあたしは母を傷つけられた事の方が許せなかった。
母は昔から優しい人だったんだ。
誰にでも優しくて、親切で、思いやりがあって‥‥。
人情深い人だったから―。
母は周囲の誰からも好かれていた。
今思えば、あの男と再婚したのだって、本当は、あたしの為にしたのだと思う。
“奈央には父親が必要ね”って‥。
そう思って再婚に踏み切ってくれたのだと思う。
それなのに、結果的にあたしは、その『父親』に犯され、
“妊娠”“中絶”と言う体験を、若干12歳にして体験してしまった。
こんなに優しい母だから、常に自分の事よりあたしの事を考えてくれた母だから‥‥‥‥。
苦しんだと思う‥。
随分と自分を責め、苦しんだと思う‥。
あたしは大人になった今でも、母は一番尊敬している人だし、あたしが目標としている『母親像』でもある。
―でもね、あたしもまだ子供だったから‥‥‥。
自分が酷く傷ついて、心に余裕が持てなくなってしまった時、母を思いやる以上に強い感情‥‥つまり激情が生じ、時として母に当たり散らし、母を深く傷つけてしまった事もあったんだ―。
それは、あたしが中学校に入学してから始まった悲劇と同時に、母を長い間苦しめる事にもなったの――。
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