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キャッチボール

[292]  さすらいの小説家  2006-04-07投稿
僕が一方的に熱くなってつい声を玲花に荒げてしまった。玲花は僕の目を見て静かに涙を流していた。玲花は何も言わず立ち去ってしまった。しばらく興奮の冷めない僕は一人で歩き始めた。するとポツポツと雨が降ってきた。僕が歩くにつれ勢いを増す雨。まるで僕を蔑むようだった。閑静な公園から離れて商店街に立ち入った。いつもの近道を通ると玲花と会いそうで気まずくなるかもしれない。だから商店街を通る回り道で帰ろうと思った。
雨は一行に止む気配がない。僕は商店街のいつも行く駄菓子屋の屋根の下で雨宿りをしようとした。すると、道路を挟んで向こう側のCDショップから音楽が聞こえた。『DISTANCE』だ。
(切なかったなあの時)
しばらく曲に酔い痴れていた僕は涙を流していた。

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