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冬の雫 〜君の為に〜

[301]  Hi−Sa  2008-01-06投稿
俺はその彼女の顔をジッと見た。
何か引っ掛かる。
なぜかはじめて会った気がしない。

その声
その顔
その雰囲気

まるで昨年亡くなった前の彼女そっくりだ。

いや、そっくりと言うよりまるで生まれ変わったような。

俺は思わず

「絢(あや)か?」

と期待と共に言葉が洩れた。
絢と言うのは亡くなった彼女の名前。
もし、絢と言う名前なら、俺は………


「え?絢…?私は翔子って名前だよ?誰かと間違えてるの?(笑)」


彼女は一瞬キョトンとしたが、すぐに笑った。


俺は一瞬ガッカリした。
だけど絢にそっくりな彼女、翔子さんと出会えた事に胸を踊らされる。

まさか双子の姉妹なんて、そんな事ないはず。

絢に姉妹はいない。
本当に生まれ変わったような。
一目だけで翔子さんに、ひどく懐かしく、それであって愛おしい感覚に陥った。


「あの…ギターは弾かないんですか?」

ボーっとしていた俺に彼女は話し掛けてきて、ようやく自分の世界から抜けた。

「あっ、あぁ…今から弾くよ☆」

そしてまた、俺はギターを弾き始めた。

彼女は黙ったまま俺の歌を聞き、リズムに乗って首を左右に動かし、目線は俺の目に注ぎ込む。


すごく照れ臭い。

他の女の人に見られても何も照れ臭いって気持ちもなかったのに。

途中、俺は何回も動揺して歌詞間違いやコード間違いをして慌てる。
その度に彼女はリズムを止め、再びギターを弾けば彼女もリズムをとる。

初対面だとは思えない程、そこだけは息があっている気がした。

俺の調子が上がってきた時、俺は感じた。

俺は彼女しか見えてない。
他にも何人か女の人が見てくれているが、俺は彼女としか目を合わせられない。
いや、合わしたい。


これは
恋?

そんな馬鹿な。
いくら絢に似てるとはいえ、俺自身の事は俺しか分からないが、俺は人に惚れやすくないタイプだ。

出会ってまだ10分程度。
人をそんなすぐに好きになれない。

じゃあ、この感覚は?
恋…なのか?


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