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キャッチボール

[334]  さすらいの小説家  2006-04-07投稿
「ちょっと待った。」
後ろから声がした。振り向くと体育教師の中西、通称『鬼』が立っていた。
「授業始まってから思う存分やれぃ。」
筋骨たくましい体でいかつい顔、のぶとい声。圧倒的な威圧感で僕達を引き止めた。
「先生、今日はどういった形式で試合するんすか。」
里村が尋ねた。
「今日は男女でペアを組んでもらってダブルスの対抗戦をする。まず総当たりで勝ち星の多い四チームが準決勝に残る。あとはトーナメント形式だ。そして一時間じゃ終わらないので二週間かけて優勝を決める。賞品は、楽しみにしてろ。」
「マジかよ。俺、絶対花崎と組みてぇ。」
香山が言った。口を開いていないだけで本音は誰もが皆そう思っているだろう。
「どうやって決めるんすか、ペア。」
「抽選だ。」
「マジっすか。」
里村が驚いてみせた。
しばらく話をしているとクラスの連中が続々と集まってきた。僕のクラスは全員で32名でちょうど男子と女子が16名ずついるのだ。都合のいい話だ。それはともかく全員集まったところで『鬼』が先程の説明をした。クラスからはざわめきが起こった。

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