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静かな電車

[279]  カルメ焼き010  2008-01-06投稿
気が付けば、電車に乗っていた。外には何と形容していいのかわからない景色が広がり、電車の中には、他にもいろんな人が乗っている。
沢山の人が乗っているが、誰も言葉を発しない。静寂が辺りを支配していた。音をたてることをためらわせる静けさの中、何もすることがなく、他の人と同じようにじっとしているしかなかった。

それから、一体どのくらい経っただろう。
単調な動きを繰り返していた電車にようやく変化があった。
止まったのだ。
小さな反動があってから電車が動きを止め、扉がゆっくり開いた。プラットホームが目に入る。
だが、ベンチも何もない。あるのは屋根とどこに続くかわからない階段だけ。
背の曲がったお婆ちゃんが、ゆっくり扉へ向かって歩いていく。今にも倒れそうな足取りでやっとのことで電車を降りた。
お婆ちゃんが降りるのを見計らったように、扉は開いた時と同じ速度で閉まった。
やがて、何事もなかったかのように、走り出す。前と変わらぬ静けさが、舞い降りた。

長い長い間この電車に乗っていて、とうとう老けた。
電車は止まる度、出て行く人か、新しい人を乗せ、この車両内では自分が一番の老いぼれになった。
ふと、もうすぐ電車が止まるとわかった。
今までに何度も目にしたプラットホームが顔を出す。
自分の番が来た。
ゆっくり転ばぬように、扉へ向かった。遥か昔に見た老婆のように。
プラットホームに降り立って、電車の方を振り返る。何の飾り気もないそれに、今までよく飽きもせず乗っていたもんだと、半ば関心した。

そして、去って行く電車に、『さようなら』と呟いた。

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