aki-第3章-?
「はい、どうぞ。」
私はマグカップを二つテーブルの上にコトリと並べた。
「タクシー、呼ぼうか?」
簡単な手当てをしながら、あきに問いかけた。
あきがふいに手当てをしている手から視線を私に移した。
「何も聞かないのか?」
このあきの質問に、私は答えられずにいた。
聞きたい事ならたくさんあるのに、私には『知る権利』が無い様な気がした。
「あいつは…。」
私にお構い無しにあきが口を開いた。
「加菜は、悪くないんだよ。」
あきの声が当たり前の様に、彼女の名前を呼ぶ。
呼び慣れた感じが、私の気持ちを揺るがせる。
それでもあきは続けた。
「加菜とは付き合ってた。
わかっていたんだ。自分が側にいてやらないと加菜は駄目になるって。
でも、自分の気持ちに嘘はつけなかったんだ。例え傷つける事を知っていても。」
私は、胸の奥が熱くなっていくのに自分でも気が付いた。
嬉しくてじゃない。
悲しくてじゃない。
何よりも、誰よりも自分自身が恥ずかしくて、惨めに感じた。
あきは、優しい人だ。
誰かを平気で傷つけられるようなタイプなんかじゃない。
「今日、唯の会社で仕事が終わる頃、加菜から連絡がきたんだよ。唯がいなくなれば別れないよねって。
嫌な予感がして、会社の入り口を見たら偶然唯の後ろ姿を見掛けたから、急いで追いかけたんだ。」
あきは続けた。
「まぁ、何よりも…。唯に怪我が無くて良かった。」
あきはそう言って、私の頭をフワリと優しく撫でた。
変わらない笑顔のままで。
汚くて、ズルいのは私だけ。
あきが優しいから。
加菜の気持ちがわかるから。
亮ちゃんが何も言わないから。
沢山の気持ちが、一気に私の中をグルグルまわる。
気付くと、私は泣いていた。
私はマグカップを二つテーブルの上にコトリと並べた。
「タクシー、呼ぼうか?」
簡単な手当てをしながら、あきに問いかけた。
あきがふいに手当てをしている手から視線を私に移した。
「何も聞かないのか?」
このあきの質問に、私は答えられずにいた。
聞きたい事ならたくさんあるのに、私には『知る権利』が無い様な気がした。
「あいつは…。」
私にお構い無しにあきが口を開いた。
「加菜は、悪くないんだよ。」
あきの声が当たり前の様に、彼女の名前を呼ぶ。
呼び慣れた感じが、私の気持ちを揺るがせる。
それでもあきは続けた。
「加菜とは付き合ってた。
わかっていたんだ。自分が側にいてやらないと加菜は駄目になるって。
でも、自分の気持ちに嘘はつけなかったんだ。例え傷つける事を知っていても。」
私は、胸の奥が熱くなっていくのに自分でも気が付いた。
嬉しくてじゃない。
悲しくてじゃない。
何よりも、誰よりも自分自身が恥ずかしくて、惨めに感じた。
あきは、優しい人だ。
誰かを平気で傷つけられるようなタイプなんかじゃない。
「今日、唯の会社で仕事が終わる頃、加菜から連絡がきたんだよ。唯がいなくなれば別れないよねって。
嫌な予感がして、会社の入り口を見たら偶然唯の後ろ姿を見掛けたから、急いで追いかけたんだ。」
あきは続けた。
「まぁ、何よりも…。唯に怪我が無くて良かった。」
あきはそう言って、私の頭をフワリと優しく撫でた。
変わらない笑顔のままで。
汚くて、ズルいのは私だけ。
あきが優しいから。
加菜の気持ちがわかるから。
亮ちゃんが何も言わないから。
沢山の気持ちが、一気に私の中をグルグルまわる。
気付くと、私は泣いていた。
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