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粉雪の降る窓辺から・3

[315]  一宮 詩音菜  2008-01-08投稿
 看護師が由来の部屋の前で話をしているのだが、その声がかなり大きく、眠れずにいた由良に丸聞こえだったのである。その内容というのが、

「え〜。じゃ、橋本先生が警察に連れてかれたの?」
「うん。何でも橋本先生のハンカチを握って、しかも、研究棟の橋本先生達がいつもいる部屋の前で死んでたんですって」
「でも、それだけでは、橋本先生が犯人とは限らないじゃない」
「でも、さ。その死んでた子、三枝愛美さんって、何時も橋本先生にまとわりついてたじゃない。しかも、橋本先生も嫌がってるって感じじゃなかったしさ」
「まぁ、そうだけどさ...」
「それ、どういうことですか?」

 そこに割って入ったのは、由良である。2人の看護師の話に矢も立てもいられなくなった由良は、スリッパも履かずに、裸足で部屋から飛び出していた。
 由良の姿を見て、
「あっ」

と言って、手で口を押さえた看護師2人だったが、すでに遅かった。由良は、驚きのあまり、かなりきつい訊き方になっている。

「どういうことなんですか? 兄が警察に連れていかれたって。その死んでいた人は兄の恋人だったんですか? で、その人を兄が殺したって言うんですか?」

 由良の矢継ぎ早の質問に答えられずにいる看護師の横から、

「それについては、こちらでお話しましょう」

 と、声をかけて来た男性がいる。
由良が声のした方を見ると、1人は大柄で自分の父親くらいの年の男性、もう1人は、大柄な男性よりかなり若く、長身でメガネをかけた男性と、2人の男性が立っていた。

「あの...。あなた方は...?」

 由良の質問に、

「これは、失礼」

 と言って、いかつい男性の方が、警察手帳を背広の懐から取り出して見せながら、

「N県警、捜査一課の長野と、こっちが元井です」

 と自分の名前と連れている若い刑事の名前を告げた。刑事が来たせいか、

「す、すみません。私達は失礼します」
 そう言うと、看護師2人は、そそくさとその場を去って行った。由良は髪の長い、いかにも世間知らずのお嬢さんと言った感じの女の子だが、根がしっかりしているので、刑事2人が目の前に立っても臆する様子もなく、

「一体、どういうことなんですか? 兄に殺人の容疑がかかっているのでしょうか?」

 と、刑事の目をしっかり見ながら訊いた。

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