携帯小説!(PC版)

トップページ >> 恋愛 >> 心、春休み

心、春休み

[140]  きき  2008-01-08投稿
昭和55年1月1日、運命が動きだす。年の初めの喧騒のなかで、私のまわりは呆れるほど静かだった。しかし、私の心は平穏ではなかった。世に言う恋の病であった。年を取った今ではもう得ることのできない時間であった。しかし、そのときは、そんな幸せの時間が今しかないなんてこと気付きもしなかった。
 今日もいつものように、学校へ行く。今日は運良く彼と登校時間がかぶった。かぶったといっても、付き合ってラブラブ登校しているわけではない。いつもそれは偶然なのである。      物理の時間の教室移動、休み時間の束の間彼女と目が合う。それだけのこどが、このよでもっとも緊張する時間だった。
私は思う、片思いは最も苦しく、最も美しいものと。 今となっては片思いなんてほとんどない。たとえ、ほれてもなんとなく、大人の事情がからんでくる。ただただあの人が好きで、見返りは求めない。それが初恋ではなぜか簡単にできる。たぶん初恋はかみさまからのおくりものだろう。      昭和55年、夏私の恋は動きだした。ずっと片思いだった人を、花火に誘おうと思った。夕方の校舎にほのかに夕日が帳をおろし、ようやく相手の顔を判断できる。たぶん真っ暗でも私にはわかっていただろう。今目の前にいるのがあの人で、あの人の空気がとりまき、あのひとの気配が立ちこめ、私は確実にあの人を認識し、そして緊張の渦の中に入っていくのだ。   私は言う言葉を用意していた。
「あのー、もしよかったら花火見に行きませんか?」たったこれだけの台詞に、一生のすべてを掛けた。結果は、素通りされた。恥ずかしさと自己嫌悪により、しばらく立ち尽くした。      その夜、私はさいど、考え直し電話で誘うことにした。友達から、番号を聞き、話す内容をなんどもリハーサルしながら、受話器をとる。 「もしもし、北村です。」女の声だ。「同級生の佐藤と申しますがたくやくんいますか?」
「今、塾にいってます。」
「そうですか。」たぶん弟とおもわれるひと会話で、私は緊張感を使い果たした。結局一人花火でも見に行こうと決めていた。そんなとき、ちょっとした神様のいたずらがあった。

感想

感想はありません。

「 きき 」の携帯小説

恋愛の新着携帯小説

新着小説作品

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス