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レジェンド‐新世紀伝説 16

[417]  朝倉令  2006-04-09投稿

  闇の中



「裏手も見張りがいやがるな。  ハッ、用心深いこった、感心感心」



 忍術の心得がある田島ほか四名を引き連れ、神一久は闇に紛れ、迂回して集落の裏にあたる谷に潜んでいた。


 一行は、草木の色に近い迷彩を施した装束に身を包み、大型ナイフとナイロンコードだけの軽装備である。


 暗視のできる彼らには灯火のたぐいは不要だ。


「神(じん)さん、人質をなぶり殺しにするのは無しですぜ。  女は貴重なんですから」


 自分らがよもやし損じる事はあるまい、といった自負を覗かせ、田島がふくみ笑いをもらす。






「どうしたの? 何か気に掛かる事でもあるの、晋」

 段英子(たん・いーず)が山際晋に目顔で尋ねていた。


「いや、剛の言葉が気になってね。 … 陳、悪いけど裏手の谷を見てくれないか? 何を見つけても報告を優先してくれ。 頼む」

 陳(ちぇん)と呼ばれた細身の男は、偵察を任される事が多い。


 血気さかんな八極門の中にあって、陳の冷静さは異彩を放っている。 リンの弟弟子だ。


「夜襲があったらこれで(と言って指笛を鳴らす)知らせるか? 晋」


「ああ、そうしてもらえば助かるよ。 くれぐれも単独で戦うのは控えてくれ」

 山際晋は哨戒から戻った村山剛の仲間たちに『お疲れさま』と声をかけた後、短い仮眠に入らせた。



  杞憂に終われば良いけ どな……


晋は、シミの様に広がっていく不安を抑えきれずにいた。






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