星の蒼さは 9
「どうして……こんな」
あおかぜ艦長滝川恵美は呟いた。目に刺さる程まばゆかった東京のネオンは消え、かわりに燃え盛る樹木だけが暗闇を原始的に照らす。
人、生物の存在を否定した暗黒とはかくも静かなものなのだろうか。
「艦長。衛星中継で」
「どうしたの?」
「月大統領エドワード氏の公式演説です」
「…映して」
ブリッジのメイン画面に最近テレビで毎日見た横顔が映った。弱冠45歳で月と、その他居住衛星をまとめあげるカリスマ。
口元に笑みを浮かべ、演説台についた彼はゆっくりと顔を上げ、その第一声を発した。
「我々の歴史を一言で言えば…モグラだ」
ブリッジ内で失笑。だが、滝川だけはじっと画面を見据えて離さなかった。
「開拓者として、酸素も食物もない不毛の石の塊に追いやられ、居住区確保の為に一生を穴掘りに費やす……それもいい。愛すべき母なる地球の為、爪が砕けるまで穴を掘り続ける……それで…いい。だが血豆だらけになった労働者達の手のひらを見て、思う事がある。報われるのか?エネルギー不足に喘ぐ我々を見て、地球の同胞達はどう見ているのか?答えは簡単だった。かつての同胞達は我々を家畜としか見ていなかった。
あおかぜ艦長滝川恵美は呟いた。目に刺さる程まばゆかった東京のネオンは消え、かわりに燃え盛る樹木だけが暗闇を原始的に照らす。
人、生物の存在を否定した暗黒とはかくも静かなものなのだろうか。
「艦長。衛星中継で」
「どうしたの?」
「月大統領エドワード氏の公式演説です」
「…映して」
ブリッジのメイン画面に最近テレビで毎日見た横顔が映った。弱冠45歳で月と、その他居住衛星をまとめあげるカリスマ。
口元に笑みを浮かべ、演説台についた彼はゆっくりと顔を上げ、その第一声を発した。
「我々の歴史を一言で言えば…モグラだ」
ブリッジ内で失笑。だが、滝川だけはじっと画面を見据えて離さなかった。
「開拓者として、酸素も食物もない不毛の石の塊に追いやられ、居住区確保の為に一生を穴掘りに費やす……それもいい。愛すべき母なる地球の為、爪が砕けるまで穴を掘り続ける……それで…いい。だが血豆だらけになった労働者達の手のひらを見て、思う事がある。報われるのか?エネルギー不足に喘ぐ我々を見て、地球の同胞達はどう見ているのか?答えは簡単だった。かつての同胞達は我々を家畜としか見ていなかった。
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