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航宙機動部隊前史・34

[490]  まっかつ  2008-01-13投稿
銀河元号九一一年・十二の星系国家が統合して最初の定住型恒星間領域勢力《スコピオン宙邦》が誕生した。
これに続き同九二六年《ウガンポ宙邦》・九三四年には《ヴィシュヌ宙邦》が建国された。
銀河元号九九九年は、俗に《三つの九の年》と呼び倣わされる。
この時人類総人口は推定で九百億を越え、有人化された惑星が九0を数え、何よりも新しい勢力としての宙邦が九つに達していたのだ。
元祖星邦・太陽系連邦は単体では最大規模の経済を誇ってはいたが、その人口は三0七億にまで減少し、GDP全諸国合計内比率一三%と、完全に大国としての地位は喪失していた。

反対に中央域文明圏自体は、周囲の中小勢力を併合・同化させながら拡大を果たし続けていた。
太陽系を中心に二三の有人惑星々系国家が連合し、王畿《メトロウォーズ》が形成されたのは丁度銀河元号一00一年の初めだった。
言わば拡大版太陽系連邦だ。
王畿は人口七一五億人・全人類諸国GDP合計の五七%を占め、正に宇宙文明の最先進地帯であり、以後首都圏と見なされ機能する様になる。
王畿としてようやくその勇姿を現した中央域・辺域に割拠する新興宙邦群―保守と革新―二つの文明の軸が再び銀河に産まれ、こうして銀河元号二千年紀を演じる主役が出揃った。

フロンティアの有る文明は滅ばない。
又、文明と未開の交錯する辺境こそ、固定観念やしがらみが無いだけ、あらゆる分野の壮大な実験場に成れる―言うまでもなく宙邦群はその二つを兼ねていた。
この点、彼等は火星・航宙遊牧民族の疑う余地無き正当な後継者であった。
その自由かつ創造的な風土は、あらゆる個性や才能を受け入れ、育成し、充分な報償と称讚を以てこれに報いた。
中央域での異常者がここでは天才に成れ、異端者は思想家や発明家に、社会不適応者は開拓者に、悪徳商人はベンチャー企業家に、宙賊は軍人に成る事が出来た。
少なく共、成果や貢献を示せば、過去の経歴が問われる事は無かった。
同時に失敗者に烙印を押して、呪術的なまでに忌み嫌う中央域の閉鎖的風土はここには無かった。
負ければ確かに《負け犬》と面と向かって罵倒される厳しさも確かに有ったが、失敗を克服し、成功を収めた者は何時でも受け入れるだけの度量と合理性・寛容性を宙邦群は持っていた。

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