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Raven Curse 《序章―8》

[148]  シラ  2008-01-14投稿
ソラの意味深な口調に、僕は訝しげに眉根を寄せる。
彼女は、溜息混じりに言葉を続けた。

「あんたはこの現状を諦めてる。
理不尽な世界だと内心思いながらも、それを嘆いても無駄だと分かってる。
犯罪者の息子というだけで、誰もディア君の言葉に耳を貸してはくれないもんね」

ソラは憐憫や憤慨を含むような声音で、淡々と言葉を紡ぐ。

「だから、いっそこの現状を受け入れて、順応していこうと考えた。
その方がどんなに気が楽か。苦痛を苦痛と思わなければ、それは苦痛ではなくなるもんね。
でもさ、本当にそれでいいの?


ソラの言葉は、安々と僕の心を貫く。しかし、僕はそれを押し止めた。

「そう…」

僕の無言の肯定を受け取り、ソラは沈んだ声で応えた。

「余計な事言ってごめんなさい。私、こういう性分だから、許して」

ソラはぎこちなく微笑む。

「悪いけど、これは僕ら家族の問題なんだ。だから心配してくれるのはありがたいけど、僕の事は気にしないでいい。
僕に関わると安らかに死ねないよ?」

不器用ながらも僕なりに沈んだ雰囲気を改善しようと、冗談を漏らす。
ソラは寂しげな微笑を浮かべたまま、そうかもね、と応えた。
そして突然背伸びし、彼女は以前の快活さを取り戻した。

「でもさ、せっかく隣同士の席なんだから、気軽に話し掛けてくれればいいよ。愚痴でも相談でもいいからね」

「え、…ありがとう」

僕は恥ずかしげに、そう返答していた。
外はいつしか雨が止み、退去する雲の合間から零れる陽光が、久しく心地良く感じた。



昼食を終え、僕らはファミレスを出た。
ソラは本当に僕の分まで会計を払ってくれた。
自分の名誉の為に言っておくが、僕は真剣に割り勘を主張した。主張したが、ソラは軽く受け流し、速攻で、止める間もなく会計を済ませてしまった。
僕はありがたいような情けないような、複雑な気持ちで一杯だった。

僕らはここで別れることとなった。ソラの家は駅の近くだが、僕の家は駅とは反対方向で、徒歩で20分くらいはかかる。
僕はすっかり屋上での一件を忘れていた。去り際、ソラは唐突にこう告げた。

「ディア君、道中気をつけて帰ってね」

この時の僕には、それは単なる別れの挨拶としか思わなかった。

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