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MURASAME最終章

[526]  あいじ  2008-01-14投稿
件?

相変わらず、ギシギシと不気味な音を発てている階段に妙な愛着を感じるのは気のせいではないだろう。
(相変わらず古いな…)
竜助は手すりに触れるたびそう思った。
「さて…」
いつぞやと同じように一番手前の部屋のインターホンを押す。

反応がない。

竜助は急に嫌な予感に駆られて持ってきたお土産を隅にそっと置くと着ていたコートを脱ぎ身構えた。
案の定…と言うべきかどうか迷うが、怒号とともに勢いよくドアが開き全裸の少女が飛び出して来た。竜助はその少女が走り出す前にコートでくるむとそっと脇へ抱いた。
「離せ〜!バカ、スケベ!ロリコン!」
「生憎と僕はスケベでもロリコンでもありません…それは全て村雨先輩のことです」
キッパリと言い切る竜助の顔面に風呂桶が命中した。(しかしそれでも砂羽を離さなかった事は評価したい)
玄関口で半裸の幸司が仁王像のような表情で立っていた。


「ふう…」
竜助は出されたお茶を飲み息をついた。
部屋は依然として散らかったままである。
「少し片付けたらどうですか?」
「うるせぇ…それより何しに来た?」
幸司が砂羽の髪を拭きながら言った。
「仕事です…しかも咲子さんから」
有栖川咲子(最近ダイエットを始めた)は蔵王丸の秘書兼茶坊主の女性である。
「咲子さんからか…珍しいな…」
幸司がポツリと呟く。竜助は一度頷くと再び話し始めた。
「この近くの廃ビルであったことなんですが…その周辺に夜な夜な幽霊が出るって云う報告があるんです」
「浮浪者じゃないのか?」
「いえ…それと並行して妙な死体も見つかってまして…これ、その写真です」
竜助から受け取った写真を見て幸司は思わず絶句した。
最初は只の土くれだと思った。しかしそれは確かに人間の顔をしていたのだ。例えどんな芸術家でもこれを造ることは出来ない。
「これ…は…」
竜助が軽く首を振った。
「明らかに人間の仕業ではありません」


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