アーモンドの帽子 02
グリットの出て行った部屋は静まり返っていて、
一つ一つの音が小さく響いた。アーモンドはグリットの用意してくれた服に着替え、
自分の黒い髪にすっと指を通した。
エンジ色の普通より大きめなシルクハットをかぶり、何も持たず外へ出た。
グリットが待っていたので彼の横をアーモンドは歩く。
「ネイブってば朝ご飯まで多いんだね」
集会所につくと太った同級生ネイブが袋にいっぱいのパンを抱えて違うパンにかじりついているのが目に入った。
「寝る前から腹が減っててね」
ネイブとグリットはクスクスと笑った。
アーモンドは一つパンをもらい、かじりついた。
「歯磨きはした?」
「いや」
「たまにはいいよね」
グリットはリュックを下ろしながらアーモンドに言った。
村長が階段を上がってきたので皆が静かになる。
「集まったかね?」
辺りを見回しながら村長が言うと目のあった奴はコクリと頷く。
「アンジェリナが何者かに襲われたのは皆のもの、知っておるな」
先日、アンジェリナと言う幼女が何かに殺された。
獣のような足跡があったがアンジェリナの遺体にはヒトの指紋も付いていたらしい。
そのことで村の人間は呼び出された。
「やはりキルバスの仕業だったのか?」
誰かの声で皆がざわつく。
キルバスとは最近現れるようになった半獣の名前だった。
村長の声ですぐに静かになった。
「まだ分からん。じゃからみな、夜になったらあまり外をうろついちゃいかんぞ。アンジェリナの死をムダにせんよう、対策を考えるんじゃ」
皆がボソボソと恐怖を口にしだす。
キルバスの恐ろしさを皆、よく知っていた。
アーモンドはグリットの顔を伺った。
落ち着いているがそれは恐怖に包まれ強張っていた。
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