処刑生徒会長第四話・11
『池の底に何が在るのか知りたければ掻き回してはいけません―むしろ風が止み波が収まるまでじっと待ってみれば、澄んだ水面は静かにその深奥を示すでしょう』
大川アヤノは実に説話的な《処方箋》を出して見せた。
更に―\r
『大きな獲物を得たい時には前ではなく背後に気を付けねばなりません。人間の目は前には付いていますが背中には有りませんからね』
視力無き賢人は、だが余人には及ばない見識を備えている事をまたもや証明した。
『こんな話があります―蛇が蛙を狙っていましたが、鳥が木の上からその蛇に襲いかかろうとしている。しかしとある猟師はその鳥を今正に射ようとしていた―』
梅城ケンヤは正座したまま黙って聞いていた。
彼女の言わんとする所を理解出来ない愚鈍な彼ではなかった。
一条フサエ事件以来独裁に批判的な空気の漂う校内事情
九重モエ率いる穏健派と言う強大な外敵を常に抱える対外情勢
組織改革によって長期政権化に移行しつつある現在の生徒会
そして、何よりもその全てをほぼ一人で処理しなければならない多忙のただ中にある自身の心―\r
そう、心だ―\r
心が静かであってこそ、あらゆる事物が見えてくる―\r
内外の情勢はどれだけ激しくても、所詮は水面を揺らす風雨に過ぎない。
いつまでも吹き荒れる訳じゃない―\r
梅城ケンヤは大川アヤノの言葉を噛み締め―彼女への称賛を顔に浮かべた。
『いまのお話でわだかまりが解けました―ありがとうございます』
ケンヤは深々と頭を下げた。
だが―\r
『しかし、背後に気を付けるとは?出来ればもう少し詳しく教えていただきたいのですが』
とらえ方によっては、それは確かに物騒な表現に違いなかった。
『人も動物も外の物は良く見えます』
ゆっくりと、アヤノは説明を始めた。
『ですが、誰も中々内側には気付かない物です。そこは見えない場所ですから』
『見えない―場所?』
思わずきょとんとなって、梅城ケンヤは問い返した。
『それはどうやって見れば良いのです?』
大川アヤノは微笑した。
ケンヤの示した表情が彼女の脳裏にはしっかりと浮かべられているみたいだ。
『それは自ら想像して推測する―やはり心で見なければ決して見えません』
大川アヤノは実に説話的な《処方箋》を出して見せた。
更に―\r
『大きな獲物を得たい時には前ではなく背後に気を付けねばなりません。人間の目は前には付いていますが背中には有りませんからね』
視力無き賢人は、だが余人には及ばない見識を備えている事をまたもや証明した。
『こんな話があります―蛇が蛙を狙っていましたが、鳥が木の上からその蛇に襲いかかろうとしている。しかしとある猟師はその鳥を今正に射ようとしていた―』
梅城ケンヤは正座したまま黙って聞いていた。
彼女の言わんとする所を理解出来ない愚鈍な彼ではなかった。
一条フサエ事件以来独裁に批判的な空気の漂う校内事情
九重モエ率いる穏健派と言う強大な外敵を常に抱える対外情勢
組織改革によって長期政権化に移行しつつある現在の生徒会
そして、何よりもその全てをほぼ一人で処理しなければならない多忙のただ中にある自身の心―\r
そう、心だ―\r
心が静かであってこそ、あらゆる事物が見えてくる―\r
内外の情勢はどれだけ激しくても、所詮は水面を揺らす風雨に過ぎない。
いつまでも吹き荒れる訳じゃない―\r
梅城ケンヤは大川アヤノの言葉を噛み締め―彼女への称賛を顔に浮かべた。
『いまのお話でわだかまりが解けました―ありがとうございます』
ケンヤは深々と頭を下げた。
だが―\r
『しかし、背後に気を付けるとは?出来ればもう少し詳しく教えていただきたいのですが』
とらえ方によっては、それは確かに物騒な表現に違いなかった。
『人も動物も外の物は良く見えます』
ゆっくりと、アヤノは説明を始めた。
『ですが、誰も中々内側には気付かない物です。そこは見えない場所ですから』
『見えない―場所?』
思わずきょとんとなって、梅城ケンヤは問い返した。
『それはどうやって見れば良いのです?』
大川アヤノは微笑した。
ケンヤの示した表情が彼女の脳裏にはしっかりと浮かべられているみたいだ。
『それは自ら想像して推測する―やはり心で見なければ決して見えません』
感想
感想はありません。