CHANEL No19
昔私が
とても幼く
おもちゃを大事に
持ってる頃に
とても小さな
香水瓶の
一つ一つを
机に並べ
香りの世界に
迷い込んでた
そこに特別
大好きだった
不思議な香りの
小瓶があった
ただの四角い
小瓶だけれど
そこに入った
琥珀の世界は
蓋を開ければ
前に広がる
それは緑の
草原のかぜ
少し湿った
高原のもや
鮮やかな色
木の葉が今に
私に向かい
降り注ぎそう
ふんわり香る
残り香からは
私の知らない
大人のひとが
振り向く時の
儚い襟の
淡く漂う
化粧の香り
私にその瓶
くれた女性は
私を小さな
部屋に招いて
優しいその手で
私にくれた
早くに夫
無くしたそのひと
たくさん泣いた
その手でくれた
私は幼く
分からなかった
何とはなしに
両手で包んだ
今も四角い
小瓶の中の
琥珀色した
世界を着けると
草原の風
私を包む
私に小さな
小瓶をくれた
あのひとの事
心に浮かぶ
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