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航宙機動部隊前史・35

[658]  まっかつ  2008-01-16投稿
その自由な風土を媒体に、宙邦諸国同士の激しい切磋琢磨が加わって、技術革新のそこは最前衛と化した。
特に中央域方面から優秀な人材の流入が続き、派手な拡張路線の下、各国は競争を繰り広げている、投資も報酬を惜しまない―好条件は揃っていた。
同じ革新陣営でも、かつての火星共和国は飽くまでも一惑星国家・旧航宙遊牧民族は不定住移動型勢力・それに対して、宙邦諸国はどちらとも全く違う政体だった。

惑星定住型文明と言う点ならば火星共和国や中央域と類似している様だが、肝心なのは、有人惑星を持つ複数の恒星系・その恒星系達を包括する宙域か、少なくとも航路、その全てを統治する統一政府、もしくはその機能を有する中央組織―これだけ揃って初めて宙邦の名に価するとされているのだ。
広大な領域をカバーする統一国家―独立諸国の連合政体、ある意味封建的な宙際連合と、同じ定住型文明勢力でも水と油だった訳だ。
領域国家がその支配の拡大を図るのは本能以外の何物でもない。
その象徴が惑星可住化技術であり、時空集約航法だった。
それまで大気や水の無い地球型惑星を人が住めるまでにさせるには最低三00年かかるとされたが、軌道上から人工氷塊を投下させると言う実に豪快なやり方で、その過程は一星紀、つまり百年位に短縮されたのだ。
言わゆる《シューティングスター法》である。
一気に掻き回された大地が落ち着き、舞い上がった水蒸気層に人工落雷の嵐を浴びせて必要な酸素を造り出す。
更に電磁膜技術で産まれたばかりの大気をガードしながら、環境調整微子《シアノバクテリア》を星中にばら蒔き、最後にそれまで軌道上で惑星改造を指揮していた宇宙船が降下して、そのまま植民拠点と変身するのだ。
時空集約航法は新基軸・《宇宙場貫徹法》が実用化された。
それまでは莫大なエネルギーを空間の一点に集中照射して、次元抽象場(一〜五次元)を破壊する技術が使われていたが、制約上一回の航法で0.02光年・速度にして4.3Cが限界だった。
だが、真空と言っても物質やエネルギーを載せる《見えない場》がある筈で、そこに穴を開ければ速度的限界は一挙に打ち破られる筈だ―銀河元号四0八年、宇宙物理学者・ホロジュルは既にそんな予言的理論を唱えていた。

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