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奈央と出会えたから。<53>

[768]  麻呂  2008-01-21投稿
『暗くなったら花火やろうぜ。』



そう言って、北岡は両手いっぱいの花火をあたしに見せたー。



『もう、後5日で夏休みも終わりじゃん?!夏休み最後の思い出によ?!』



北岡はそう言うと、昨日と同じく、あたしの隣のブランコに腰を掛けたー。



『北岡君。どうしたの?!花火なんて!!』



そう言ったあたしの声は、自分でも分かる位、弾んでいたー。



まさか今日は北岡が来る筈が無いと思っていたけど、会いたいと思っていたからー



その思いが通じたかの様な北岡の登場に、あたしは嬉しさを隠せなかったー。



『花火なんて何年ぶりかな‥‥。』



あたしは一言呟いていたー。



* * * * * *

夕日もすっかり沈み始めるとー



あたし達は、こんな会話で盛り上がったっけー。



『木下知ってるか?!ロケット花火の戦争ごっこ。』



『ロケット花火の戦争ごっこ???』



『そ。これは海辺の砂浜でしか出来ないんだけどな。』



『え〜?!どうやるの?!どうやるの?!』



『遊び方は至って簡単。2チームに分かれて、砂山にロケット花火を突き刺し、相手チームに向かってぶっ放す‥!!
これだけさ‥。』



『何それ〜?!危ないじゃん!!』



『ま‥ね。でもよ、これがまた面白いんだよな。2連射、3連射なんて序の口よ。単純明確な遊びだろ?!』



『あたしは絶対やりたくなぁ〜い!!』


『まぁ‥。女の子には向かない遊びだよな。』



『あはは。』



勿論、北岡はロケット花火なんか持って来なかったけどー。


あたしに話してくれた『ロケット花火の戦争ごっこ。』
の話をしている時の北岡の目が、とても楽しそうだった事ー。



楽しそうに、ずっとあたしの目を見て話し続けてくれた事ー。



そんな些細な小さな事が、その時のあたしには、凄く嬉しかったんだー。

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