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†孤独の中に咲く一輪の薔薇†

[456]  吉乃森 雪  2006-04-13投稿


ねえ。

もしもこの世界に、神様がいるのなら。



ねえ。

もしもこの背中に翼が生えたなら。



ねえ。

もしもこの海原を舞う鰭がついているなら。




俺は
俺の知らない。
俺しか知らない。

自由が有る。
友達が在る。

自分が居る。




そんな世界へ

羽ばたいても良いですか──…




────…

「なあ!数学の宿題写させてくんね?」

「またかよ……」

場所は峠原学園高等部。こいつは小学校からの腐縁の『藍河 茉実(あいかわ まみ)』。女みたいな名前の癖に、女のケツばっか追い掛けてるような100%一般男子。

まあ、ソレを一般男子とは思いたくないが…。


そして茉実は毎回数学の授業が始まる寸前に俺の前まで来てノートをかっぱらっていく。


「たまには自分でしろよな」
「いいじゃん♪頭イイ憂(ゆう)のノートだと安心じゃん?」
「はっ…」



いつもと同じ。
繰り返される会話。
日常のエンドレス。


──ガタンッ…

「あ、はよー佐野!!最近遅刻ばっかだな!知らねェぞ、担任にゲンコツ喰らっても!」

けけけっ、と楽しそうに笑う茉実。

そんな茉実を無視し、佐野は憂に挨拶を交した。

「少し寝坊した…、憂。今日は喧嘩売られなかったか?」
「…………うん」





“喧嘩”──。

喧嘩なんてものじゃないけど。

本隠されたり。
呼びだされて殴られたり。

理由なんて、明確じゃない。



ただ 俺の生意気な性格が好めないだけ。
『馬鹿じゃないの』と言う視線が腹立たしいだけ。

けして涙を流さない俺にムカつくだけ。



「そうか…今度からはもう少し早く来るとしよう」

そう言って
俺の頬についた痣を優しく撫でた。

「これは……殴られたとかじゃ…!」
「ああ、知っている。」

わかったから、と。
もう一度優しく撫でた。




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