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航宙機動部隊前史・36

[496]  まっかつ  2008-01-22投稿
時空無き状態を科学者達は0次元と名付け―それは既に宇宙観測によって確認されていた。
更に、負の次元まで想定された。
普通の時空と違って、全てが逆に進む訳だ。
時空の大半を占めるとされているダークマター・ダークエネルギーと打ち消し合う《根源反粒子》が血眼になって探し出され―銀河元号五三六年に遂にそれは発見された。

人工合成なった根源反粒子の束を一度に時空の一点に照射すると、ダークマター類は中和されて消え失せ、そこには真の無―0次元が現れる―この実験に最初に成功したのが同一00七年・スコピオン宙邦で、独占規制を物とせず、すぐにライバル達がそれに続いた。
押し広げられた0次元の中に、今までの時空を保つ為の保護膜《グリーンチューブ》を突き通す。
だが、完全な0は完全な静止であって、そこでは何も進まない。
そこで、科学者達は《時空統制》を考え出した。
端的に言えば、完全な0ではなく0.1次元みたいな《不完全な無》を作り出し、それで運動を確保しようとしたのだ。

突き立てられたグリーンチューブの長さと、投入された根源反粒子の量に応じて、例外は幾等でも有ったが、距離と速度(所要時間)のコントロールが出来る。
人類発の有人時空場貫徹法型・時空集約航法は銀河元号一0四四年・ウガンポ宙邦が実行し、特殊実験探査船《インメイト》号は、一回の時空跳躍で0.08光年を僅か60時間で踏破し、搭乗していた死刑囚達は免罪され、一躍英雄となった。

惑星開発と時空集約航法の二大技術の確立は、宙邦群に新たな力と、何よりも自信を与える事となった。
特に時空場貫徹法は度重なる改良で、一星紀の間に一回につき0.45光年・所要時間350時間以内まで進歩した。
これは当然人類の活動領域の爆発的な拡大に繋がり、各宙邦は競って遠宇宙への探査・植民に乗り出した。
銀河元号一一00年時・人類文明の及ぶ領域は球形に均すと半径400光年にまで広がり、次の三0年間にさらに百光年が加算された。
相対的に強大化した宙邦群に、宙際連盟に代表される中央域は危機感を募らせた。
何時もそうだが、統制を離れて拡大した宇宙の端で、どんな科学的・技術的冒険や暴挙が行われているのか、見当も付かない。
特に、人類自体を科学的に改良・変化させる様な動きに彼等は神経を尖らせた。

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