インチキ手品師:前編
私とその手品師との出会いは、ほんの数週間前であった。
ある日の夕方、犬の散歩の途中に公園を通り掛かった時の事である。ふと公園の広場の中央に人だかりが出来ているのに気付いた私は、何事かと思い近付いた。
そこには、胡散臭いピエロの格好をした男の姿があった。男の横に置いてあるボロい段ボールには『マジックショー』と小学生のような字で書いてある。
その時、男の手からハトが飛び出し、
『ね、100円玉がハトになっちゃいました。』
と男が言った。どうやら、お金をハトに変えるという手品をやったらしい。
『さぁ〜て次は、何を何に変えましょうか?何でもいいですよぉ〜。』
男は、ハトが羽をバタつかせ飛び立ったのには脇目も振らずにそう言った。
『おや?そのワンちゃん可愛いですねぇ。』
一瞬自分に言われたのかと思ったが違った。男の視線の先には見物人の一人であるまだ幼い少女の手に鎖で繋がれた小さな犬がいた。
突然声をかけられた少女は怯えた表情をしたが、
『では、このワンちゃんをおサルさんに変えてあげましょうか。』
男にそう言われた途端、少女は顔を輝かせ、
『おサルさん、好きー!!!』
と声を上げた。では決まりだと言わんばかりに男はその少女にわざとらしい笑みを向けてから、犬を抱き抱えた。
その瞬間、私は自分の目を疑った。持ち上げた瞬間…いや、男の手が犬に触れたと同時に犬は猿に変貌を遂げたのだ。
『はい、犬が猿にへ〜んしん!』
男がそう言うと見物人から拍手が起こった。皆楽しそうである。
(凄い…。一体どんなトリックがあるのだろう…。)
そんな事を考えていると、男と目が合ってしまった。
『おやおや?こっちのワンちゃんも可愛いですねぇ。』
と、私の連れている愛犬メロに目をやった。
ある日の夕方、犬の散歩の途中に公園を通り掛かった時の事である。ふと公園の広場の中央に人だかりが出来ているのに気付いた私は、何事かと思い近付いた。
そこには、胡散臭いピエロの格好をした男の姿があった。男の横に置いてあるボロい段ボールには『マジックショー』と小学生のような字で書いてある。
その時、男の手からハトが飛び出し、
『ね、100円玉がハトになっちゃいました。』
と男が言った。どうやら、お金をハトに変えるという手品をやったらしい。
『さぁ〜て次は、何を何に変えましょうか?何でもいいですよぉ〜。』
男は、ハトが羽をバタつかせ飛び立ったのには脇目も振らずにそう言った。
『おや?そのワンちゃん可愛いですねぇ。』
一瞬自分に言われたのかと思ったが違った。男の視線の先には見物人の一人であるまだ幼い少女の手に鎖で繋がれた小さな犬がいた。
突然声をかけられた少女は怯えた表情をしたが、
『では、このワンちゃんをおサルさんに変えてあげましょうか。』
男にそう言われた途端、少女は顔を輝かせ、
『おサルさん、好きー!!!』
と声を上げた。では決まりだと言わんばかりに男はその少女にわざとらしい笑みを向けてから、犬を抱き抱えた。
その瞬間、私は自分の目を疑った。持ち上げた瞬間…いや、男の手が犬に触れたと同時に犬は猿に変貌を遂げたのだ。
『はい、犬が猿にへ〜んしん!』
男がそう言うと見物人から拍手が起こった。皆楽しそうである。
(凄い…。一体どんなトリックがあるのだろう…。)
そんな事を考えていると、男と目が合ってしまった。
『おやおや?こっちのワンちゃんも可愛いですねぇ。』
と、私の連れている愛犬メロに目をやった。
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